出版社内容情報
スペイン内戦の時代に生まれ,二○世紀最大の政治的絵画といわれる「ゲルニカ」.パリ万国博(一九三七年)に初めて展示されたこの壁画は,単にゲルニカ爆撃への怒りを語るだけではない.著者は,ファシズムと人民戦線が対峙する時代状況に重ねてピカソの内面的な苦悩を描き,さらに戦後史の中でこの絵が担った役割にまで説き及ぶ.
内容説明
スペイン内戦の時代に生まれ、20世紀最大の政治的絵画といわれる「ゲルニカ」。パリ万国博に初めて展示されたこの壁画は、単にゲルニカ爆撃への怒りを語るだけではない。著者は、ファシズムと人民戦線が対峙する時代状況に重ねてピカソの内面的な苦悩を描き、さらに戦後史の激動の中でこの絵がたどった運命にも説き及ぶ。
目次
第1章 パリ万国博覧会・1937年―ファシズムと人民戦線
第2章 ゲルニカの爆撃―誰が、なぜ、どのように?
第3章 『ゲルニカ』誕生―ピカソの苦悩、作品の解釈
第4章 漂泊と復活―ニューヨークから祖国へ
終章 プラド美術館で
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
308
20世紀を代表する名画『ゲルニカ』だが、発表当時は不評だった。1937年パリ万博でのスペイン館の正面ロビーに飾るためスペイン共和国政府が発注。ドイツ軍によるゲルニカ空爆がテーマなのに、そこには、飛行機も爆弾も描かれていなかった。「もっとリアルな絵」を期待していた依頼者は、正面ロビーから目立たない場所への移動を検討した、という。しかし、時空を超える絵だったからこそ、単なる政治色を反映した作品にならず宗教絵画のような永遠の傑作となった歴史が伝わってきた。2024/06/01
buchipanda3
110
ゲルニカというと独特なタッチで、よく分からないが苦しげで重々しいと最初は戸惑った覚えがある。本書はモチーフとなったバスク地方のゲルニカ爆撃の悲劇が起きた経緯、絵に込められた意味合い、さらに戦後に絵がどう位置付けられたかなどが丁寧に解説され、まさに一枚の絵が歩んだ物語を堪能できた。パリ万博の独ソの館対立や美術家たちの連携も印象的。絵の制作の流れで政治的色彩から普遍的な宗教的色彩への変遷が興味深かった。あえて難解な多義性を持たせたのか。その分、この絵は常に現代社会へ当て嵌めて訴えかける作品になったと思えた。2021/02/19
雪紫
28
原田マハさん「暗幕のゲルニカ」の参考文献。ゲルニカだけじゃなく他の芸術作品の行方や戦争の被害だけじゃなく、まさかのピカソの遺産の処遇まで書いてあるのには驚き。改めてゲルニカが当時消されなかったなと思うとともに、原田マハさんこのエピソードから、あれとか創作に反映させたのかな?という興味も湧く本。2020/06/22
うえ
11
二千人の被害者をうんだナチスの爆撃。「ゲルニカはビルバオの東、約20㎞にあるビスカイヤ州の古都である。…この地方の商業の中心であり、また自治の中心であった…1937年4月26日、この町は爆撃によって市街地の25%の建物が被害を受け、最終的には火災によって70%以上が炎上した…ゲルニカへの入り口の…小集落では、住民は15分間にわたって機銃掃射をうけた」「ヒトラーの考え方は…拡張された空軍力を国際政治におけるテロ目的のために利用すること…テロ(恐怖)のための爆撃という考え方に、ヒトラーは最後まで固執していた」2023/05/03
pepe
2
スペイン内戦の末期に空爆されたゲルニカを主題としてピカソが制作したゲルニカの絵がたどる歴史。1937年はバリの万国博覧会の年でもあり、スペイン内戦の渦中でもあった。ピカソは何を表そうとしたのか、絵の構図から探る意味から、フランコ死後の民主化の象徴としての役割まで幅広く語る。2024/06/09