出版社内容情報
敗戦直後から四十余年,旺盛な創作活動を重ねる一方,東西の古典から前衛小説に至る文学の森を逍遥してきた著者が,今日まで七十年の魂の軌跡をふり返る.早世した母や父の影響,孤独・貧困・病いとの闘い,女性たちとの交わり,そして思想上の遍歴と到達点まで,戦後を代表する一知識人による初めての赤裸々な自己解剖の試み.
内容説明
敗戦直後から40余年、旺盛な創作活動を重ねる一方、東西の古典から前衛小説に至る文学の森を逍遙してきた著者が、今日まで70年の魂の軌跡をふり返る。早世した母や父の影響、孤独・貧困・病いとの闘い、女性たちとの交わり、そして思想上の遍歴と到達点まで、戦後を代表する一知識人による初めての赤裸々な自己解剖の試み。
目次
第1章 幼時の環境
第2章 父の影響
第3章 青春の人格形成
第4章 人生の戦い
第5章 成熟と老年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
無識者
8
自分の生きている時代と比較しながらよみました。彼の童貞時代に持っていた女性観には少し共感しました。性行為は相手を性欲のはけ口として冒しているにすぎないのではないかと...なんとなく不安ですね。2016/09/22
パブロ
3
前衛文学エロ爺さん(でも、その博識さと明晰さは土下座するほど)の自伝的エッセイ。ここまで客観的に書かれた自伝ってないんじゃないかって思うほど、精緻に自分のことを分析している。自らの人格形成に決定的な影響を与えられた父の存在。妻の死のために陥った深刻な神経症。その治療の電気ショックで、これまで積み上げてきた文体を喪失するという危機。こんなに薄い本なのに「ここまでやるか!」って思うほど内容みっちり。中村真一郎という作家、文学者を知るにはこれ一冊! でも、この人の小説までは手が伸びないんだな〜。でもいつか読む。2012/08/06
フクロウ
2
中村真一郎、そりゃあ面白いもの書けるはずだわ…。西欧はプラウトゥスにソポクレス、漢籍、そして日本の王朝文学と、これこそ濫読、それに真の教養主義というんだろうな。絵画から音楽まで教え、社交界に連れ出しつつ、「個人」として息子を尊重し、また息子の世話を全くタイプの異なるお妾さん一人目と二人目に行わせていた実父の生き方。田舎の小学校で浮いていたときから、すでに個人主義の、非国民の萌芽はあった。老年期の、友人が次々と死んでいくことを嘆く様は、最近「残る桜も散る桜」の話を考えていることもありつらい。2023/08/17
isutabi
0
整理のつかない「自伝」 【内容】 中村版「羊の歌」かと思う。 もっと文学的かと想像していたけどけっこう自伝的でした。 ただ、年代順に記述されてはおらず、著者の必然によって、ふらふら年代が飛ぶので、自伝としてはわかりにくいかもしれません。 とはいえ、この著者のことなんで、自分の美意識の根源を探る自己分析に終始します。要するに小説とさほど変わらない雰囲気です。 あくまでも自己分析であり、空想旅行みたいなもんなんで、真偽は本人にもわからないとは思いますが、本人にとってはこれが真実なのでしょう。 まあ、親2013/09/09