出版社内容情報
皇帝の権威の象徴である龍や麒麟などの聖獣から孫悟空に至るまで，古代中国には数多くの妖怪が登場する．これらにこめられた様々の宇宙論的イメージは中国人のいかなる思考様式から生まれたのであろうか．著者は『山海経』を始めとする中国の文献や美術史学，文化人類学などの成果を駆使し，妖怪の「存在の論理」を読み解いていく．
内容説明
皇帝の権威の象徴である龍や麒麟などの聖獣から孫悟空に至るまで、古代中国には数多くの妖怪が登場する。これらにこめられた様々の宇宙論的イメージは中国人のいかなる思考様式から生まれたのであろうか。著者は『山海経』を始めとする中国の文献や美術史学、文化人類学などの成果を駆使し、妖怪の「存在の論理」を読み解いていく。
目次
１ 妖怪との出会い（中山王国文物展にて；角の聖性；妖怪のイメージ）
２ 龍の栄光と堕落（龍のイコノグラフィ；龍の形態と生態；文字のなかの龍；文様のなかの龍；天空の龍；龍の聖と俗）
３ 霊獣と魑魅魍魎（朱雀と玄武；麒麟と一角獣；人面獣の秘密；人魚の王国；砂漠の水怪；魑魅魍魎の世界；妖怪の環境学）
４ 妖怪と漢の文化（鬼の登場；変身の論理；国家のなかの妖怪）
著者等紹介
中野美代子［ナカノミヨコ］
１９３３年札幌市に生まれる。１９５６年北海道大学文学部卒業。１９９６年北海道大学教授を退官。専攻、中国文学。著書に『孫悟空の誕生―サルの民話学と「西遊記」』（福武文庫）（昭和５５年度芸術選奨文部大臣新人賞受賞）など
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感想・レビュー
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うえ
5
「ここで「神たち」といったが、これを「妖怪たち」といい改めても一向にさしつかえあるまい。妖怪の定義は古来さまざまであるが、私はごくあっさりと現実に存在する人間や動物や植物や、ときには鉱物などが、その現実の形態をこえて、人間の観念に現前するもの、と考えておきたい…なぜ現実の形態や生態をこえるのかといえば、これまたあっさりと、そのときどきの規範に応えるからだ、としかいいようがない」「「ひとつ目」や「首なし人間」などは…ふつうの人間にとっては、人体の調和を破壊することにおいて、すでに規範的な存在といえるから」2015/07/19
更紗蝦
5
モンスター図鑑的な本ではなく、美術論・文化論的な内容です。諸星大二郎の中国伝奇漫画がお好きな人におすすめです。2012/08/30
Mark.jr
3
読み直し。タイトル通り中国の妖怪について解題した本です。取り上げられているのはメジャーは龍からマイナーは陵魚（人面魚のようなもの）など中国妖怪大百科こと「山海経」の端に載っているようなものまで様々なら、解説の視点も中国の歴史から動物学・図像学・日本文化との比較など、これまた幅広いです。しかし、中国の妖怪は西洋や日本のものとは、また違った神秘性がありますよね。2019/11/28
寝落ち６段
3
大変興味深い内容だった。色々な遺物に残される様々な文様から古書に至るまで、どういう経緯で妖怪は生まれてきたのか。周知の龍、朱雀、麒麟から聞いたこともないものまで。そこで注目したのが「角」である。そこには聖性が生まれ、歴史的に権力の威光として堕落するまでの経緯。山や海など古代の中国人が何を畏れていたのか、その心性までを「妖怪」から読み取れる。それが日本に伝わり、混交されていく。それにしても「龍」、「朱雀」、「山」についての記述が心を引っ張られた。日本の妖怪だけでなく、他国の妖怪論も理解できたら面白い。2013/06/20
コカブ
3
岩波文庫の「西遊記」の翻訳者が書いたもの。著者は、サイを例にとって、現実にない角を付け加えることから獣に聖性が与えられるとする。このように現実に存在する獣の一部を変換することで、妖怪が生み出されていった。漢代に入ると、妖怪は人間に飼いならされる存在になっていった。妖怪は山中に住まう魑魅魍魎として描かれるようになったが、次第に人間存在に近付いていった。著者は、国土の開発が進んで山中が恐れるべき存在ではなくなった点を指摘する。あまつさえ、妖怪は人間に変身するなど、人間を目指す行動を取るようになるのだった。2013/03/21
