出版社内容情報
「陸海空軍その他の戦力は,これを保持しない」.惨憺たる戦争体験の後に生まれた平和憲法,その中核たる非武装規定は,戦後の軍事力強化の波に翻弄され続けてきた.だが,そこに凝縮された思想こそ,今日,世界に向かって鮮やかな光を放っている.第九条誕生の背景と空洞化の跡をたどり,新しい平和保障の構想を具体的に提起する.
内容説明
「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」。惨憺たる戦争体験の後に生まれた平和憲法、その中核たる非武装規定は、戦後の軍事力強化の波に翻弄され続けてきた。だが、そこに凝縮された思想こそ、今日、世界に向かって鮮やかな光を放っている。第九条誕生の背景と空洞化の跡をたどり、新しい平和保障の構想を具体的に提起する。
目次
第1章 地球時代における平和憲法
第2章 憲法九条の誕生とその背景
第3章 憲法九条の意味の解し方
第4章 空洞化する非武装規定
第5章 平和憲法を歪めるもの
第6章 国民世論の推移と憲法
第7章 現代国防論の欠陥と虚妄
第8章 平和のための積極的構想
結び―憲法九条を生かす途
著者等紹介
小林直樹[コバヤシナオキ]
1921年長野県に生まれる。1946年東京大学法学部卒業。専攻は憲法学・法哲学。現在、東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さきん
24
憲法第九条を変えるべきではない、安保の国防アメリカ依存反対、自衛隊は違憲の立場から憲法第九条を解説する。私はほぼ真逆で、せめて九条の二項のみを変えるべきだという立場だからこそ、興味深く読んだ。戦前の軍隊経験から、軍隊の恐ろしさを痛感しているということがよくわかるが、やはり、軍隊や核装備を含めた体制を取らないと、琉球王国や朝鮮王朝のような末路になるのではないかという気がする。軍隊がなくなったら、逆にクーデターへの垣根が低くなり、一般人も蜂起しやすくなるのではないかとも感じた。2017/02/13
nobody
13
言葉は真実のためにある。それを前提とせねば議会民主制は成り立たぬはずである。しかし今それを言うと嗤われるのは、皆議会制の虚妄を認めているからである。言葉は形式を粉飾してくれればいい。自衛隊は九条違反? 馬耳東風、粛々と自衛隊法、防衛庁設置法を制定し運用、既成事実作り。ただやりたいことをやるだけ。最高裁は違憲立法審査権を有する? 統治行為論で憲法判断なんか下しませんよ。言葉はただごまかしと都合のよい辻褄合せのためにある。言葉は死んでいる。残るのは言葉の遊びである。理想社会はあり得ぬと言わないから詐欺になる。2020/03/15
Takao
3
1982年6月21日発行(1996年4月5日、第31刷)。40年前の発行。憲法第九条について「総合的に」考察を加えている。「この小著をまとめて、いま世に送り出すようになったのは、主として世界や日本の客観情勢のせいといってもよいでしょう」(あとがき)。今こそ本書のような本が求められているのでは。学生時代、著者の『憲法講義』で憲法を学んだ。長野県出身は知っていたが、隣町の小諸出身だったこと、2020年2月8日死去を今知った。東京帝大在学中に学徒出陣。戦争体験からの痛切な思いを感じた。2022/12/24
壱萬参仟縁
3
評者は、基本的に、これまでのPKO協力法や、イラク特措法などを平和憲法に照らして解釈改憲ではないか、と思っていた。今日の北朝鮮のミサイル発射の失敗において、迎撃システムが機能しなかった。交戦権、正当防衛など、今後も重要な論点となっている問題を注視していきたい。2012/04/13
marukuso
2
憲法、特に9条が何かとかしましいので読む。著者はとことん護憲派で、9条は変えるべきではない、自衛隊はなくすべきだと主張している。自分はむしろ改正して自前の軍隊を持つべきだと考えていたけど、本書の論理はたしかに頷ける所だらけ。考えが足りなかった。昨今右傾化している印象を受けるが、憲法制定当初の国民たちの理念を忘れてしまうぐらいに平和ボケしてるんだなあとこれを読んで実感。とにかく反対意見の人の主張には耳をしっかり傾けないとだめだと思いました。2014/05/03
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- 和書
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