感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
午後
3
「思索を重ね、その成果の教授をなりわいとする人々」、すなわち都市の学校や13世紀以降に興隆する大学で教える知的労働者として位置付けられた中世の知識人についての本。アベラールから、ヨーロッパの大学の歴史を経て、後のルネサンスに繋がるヒューマニズムの勃興までを辿っていく。閑暇を好み、典雅なラテン語を自在に操るヒューマニスト達は、都市に開かれた学校で思考の果実を教授する12世紀の知識人とはかけ離れたものとされている。2025/03/05
belier
2
中世の知識人誕生からユマニストの出現までをカバー。「賞賛すべきトマス主義」と著者も書くほど、トマス・アクィナスによって最高に高められたスコラ哲学が多様化し、硬直化する。各地に大学が設立され、発展するが堕落する。たとえばパリ大学はジャンヌ・ダルクの訴訟に関与し、「得意満面に」イギリス王に処刑を報告するほどだ。16世紀にエラスムスなどユマニストが登場し、頑迷なスコラ哲学を嘲笑。時代はルネサンスとなり、改革をもたらす。ただし著者は、ユマニストもまた貴族の知的エリート読書人で、民衆と離れていることを指摘している。2024/10/13
bittersweet symphony
1
キリスト教という絶対的な背景はあるにはあるが、勃興した都市のストリートを舞台にニュートラルな立ち位置でいろんな階層の人たちを集めていた知識人階層が、貴族階級の閑暇的で処世的な知的遊戯へと堕していくさまを描写している。それへの反動が宗教改革やルネサンスへと結実していくわけだが、それは別のお話という事になる。2021/10/19