出版社内容情報
山口の農村に生まれ,田園のなかで過ごした幼年時代から,多感な中学時代,「何のために生きるのか」について悩みぬいた三高時代,そして意欲に燃え勉学に明け暮れた京都大学での学生時代までを,明治大正期の風俗をおりまぜて描き出したユニークな自伝.京大事件など波乱の多い学者生活についての回想「教学十話」を付す.
感想・レビュー
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hart
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民法学の泰斗 末川博先生の生い立ちから学者として歩みだすまでの自伝。印象に残るのは、生きる目的に悩んだ三高時代。一高生 藤村操が、「悠々たる哉天壌、遼々たる哉古今、五尺の小躯を以って此の大をはからむとす」厳頭の感 を樹幹に刻み、華厳の滝で投身自殺。哲学はやらんほうがいい、と父上が言った場面。本書以降 覚えているのは、1933年滝川事件で京都帝大依願免官の気骨。1945年以降長く立命館大学の総長。末川博文学賞初めての受賞者 兵藤正俊さんに「運·鈍·根」が大切と処世訓、大学に機動隊導入への兵藤さんの反発。2021/12/09