出版社内容情報
モロッコはアフリカ大陸の最もヨーロッパに近接した土地として,フランス文学や政治の上に大きな影響を与えてきた.戦前にこの土地をくまなく旅した著者が,精彩ある文章に記して描きつくした植民地モロッコの統治組織,風俗,信仰――.自立を喪い,固有の文化を蝕まれた民族の哀しい姿が,ここにまざまざと浮かびあがる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ニックス
12
モロッコの植民地時代が書かれた本。ということで買ってみた。植民地支配されている状況はどんな感じなのか。そこに興味があった。現地の状況が綴られているわけだが、肝心の今のモロッコの状況を知らないため、植民地時代とそうでない時代の違いは分からなかった。あと昔に出版した本のため、漢字が旧字体。今の漢字と昔の漢字の違いを勉強しながら読めた。星2.52021/09/26
ドウ
5
復刊本らしく見たことも聞いたこともない本だったので買ってみました。フランス文化に明るいらしい著者がモロッコを旅した際の体験談に伝聞を補った紀行文。モロッコに対して彼は二通りの見方をしているようで、フランス文化を内面化させた帝国主義者のそれと、純粋に未知の異文化に接した驚きを綴る旅行者のそれである。ついつい前者に気を取られてしまうが(なぜフランス文化は内面化できるのにモロッコ文化はできないのでしょう)、戦前の知識人らしい和語・漢語の表現の豊かさがモロッコへの旅情をそそる。2018/08/09
ishicoro
4
モロッコ旅行中に持参。今のモロッコはイスラム教が国境となり、街中で堂々とビールが飲めなくなった今と比べてフランス統治時代の当時(1930年代)はビールを普通に飲める時代だったのだなと。長期滞在だと身分証明が必要になるなど、昔の海外旅行の苦労が感じられますね。インシャッラーっていう言葉がこの頃から普通に使われていたあたり、結構歴史のある言葉なのだなと。2017/07/21
あにこ
3
モロッコってこんなところだったのか。時代とともに変わった部分も多いだろうけれど。よく知らぬくせに、なぜだかモロッコに無性に行きたくなった時期があった(仏語もアラビア語も喋れないので尻すごみしてしまった)。■思っていたより陰気な国だ。著者の目が冷たすぎるのか。■これは果たして紀行文、というのだろうか? 絵はないが、スケッチ集とでもいうのがふさわしい。恐らく本来、特に意味も目的もないもので、それゆえに純粋なスケッチである。■別段、愉快でもない、どちらかというと退屈な代物だ。2020/01/30
hisayparrish
3
筆者の1939年当時のモロッコ紀行文。1月前に旅行したところなので、時代の違いがとても興味深いが、本質は変わっていないのかもしれない。当時の日本の知識人として、教養溢れる文体、用語、考察、幅広い知識に感服した。あとがきの中にある子どもをめぐる裁判が更に興を添えた。2019/05/02
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