出版社内容情報
ここに収められたものは,野良から,炭焼小屋から,戦場に駆りたてられ,尊い生命を失った農民兵士たちの便りの数々である.「国のため,君のため」というきびしい軍律のかげに,ふるさとをしのび,農作業を心配し,親はらからの身を気づかう真情が綴られたこれらの手紙は,あらためて戦争の悲惨さと恐しさを私たちに訴える.
内容説明
ここに収められたものは、野良から、炭焼小屋から、戦場に駆りたてられ、尊い生命を失った農民兵士たちの便りの数々である。「国のため、君のため」というきびしい軍律のかげに、ふるさとをしのび、農作業を心配し、親はらからの身を気づかう真情が綴られたこれらの手紙は、あらためて戦争の悲惨さと恐しさを私たちに訴える。
目次
鍬を棄てて
営門の中
戦線にて
土のきずな
死への行軍
1 ~ 1件/全1件
- 評価
本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kuroma831
28
岩手県を中心とした農村から出征して戦没した兵士から故郷の家族に送った戦場書簡集。1961年に岩手県農村文化懇談会が遺族から募集して集めたものから、検閲を免れたと思われるものを中心に無編集で記載。多くの感想でも指摘されているが、学徒出兵による書簡集として有名な「きけ、わだつみのこえ」とは非常に対照的。学徒兵は悲劇的だが当時ごく限られたエリート層であり、大多数は本書に出てくるような封建的な農村から出征した兵士達が多く、軍隊が全ての社会的地位を剥ぎ取る世界だったことを思わせる。2025/05/31
モリータ
10
◆1961年刊。岩手県出身者を中心とした農村出身兵士の家族宛の手紙、日記、遺書等を集めたもの。◆エリート階層出身者による文章との異なり。農村生活の厳しさに相対しての軍隊生活・教育の有難さもそこここに(その点、あとがきの内容に留意)。また修辞や歌、かなり内省的な書き味の文章もあり、簡単に非知識階級出身者の文章などと一括できないが、これもあとがきにある通り、一方で型通りの文章や誤字脱字の多い文章は除けてあること、検閲を逃れた手紙が採録されていることも考慮。◆二つの軍隊社会観についてはこれからも考え続ける必要。2020/09/20
mimm
9
高学歴の”学徒兵”の手記と違い、素朴で素直に戦争に身を投じているような気もするけど、やっぱり検閲がある以上それが100%本心とは思えないような(後書きを読んで)。中盤の日記の抜粋が、当時の状況をより鮮明に伝えていて、思わず夢中で読んでいました。硫黄島にいることをどうにかして伝えようと、宛名に隠した手紙の手法もすごく切ない…。農民ということもあり、自然をより身近に感じたり家族により心を寄せている点など、”学徒兵”の手記とはまた違った感じで、こういう本ももっと読んでみたいです。2012/02/16
シンドバッド
4
散逸を免れた手紙。心に刻み、伝えたい。2013/05/24
大臣ぐサン
3
いわば農民版わだつみの声。インテリ層が対象である『きけ、わだつみの声』と比べ、思想的な内容はほぼ皆無。文体は稚拙なものが多いながらも、より純粋な印象を受ける。検閲を意識していたということも考慮すべきではあるが、その内容は家族への思いやりを綴ったものが非常に多い。現代を生きる我々にはそれほどの家族への愛情があろうか。死と隣り合わせの戦場において父母への思いを綴れるであろうか。戦争の悲惨さより、家族のあり方を強く問いかけられたように思う。意外と戦争初期の頃は検閲も甘く、細かい戦況も伝えられていたのだと知った。2024/01/03