出版社内容情報
伝統文化として脚光をあびる歌舞伎や能・狂言,そして茶や花などは,どのように成立し発展してきたのだろうか.古代国家の束縛を打破って成長してきた中世の民衆がその生活の中から生み出したさまざまな芸能は,近世に至って歌舞伎に凝集する.それら芸能を担い支えた人びとの生活や意識に光を当て,伝統芸能の本質を説き明かす.
内容説明
伝統文化として脚光をあびる歌舞伎や能・狂言、そして茶や花などは、どのように成立し発展してきたのだろうか。古代国家の束縛を打ち破って成長してきた中世の民衆がその生活の中から生み出したさまざまな芸能が、近世に至って歌舞伎に凝集する。それら芸能を担い支えた人びとの生活や意識に光を当て、伝統芸能の本質を説き明かす。
目次
歴史・生活・藝能
古代のたそがれ
今様の歌ごえ
「座」の世界
一味の寄合
能と狂言
河原の人々
東山文化
町衆生活
歌舞伎前夜
黄金世界
歌舞伎誕生
伝統文化
著者等紹介
林屋辰三郎[ハヤシヤタツサブロウ]
1914‐98年。1938年京都大学文学部卒業。専攻、日本文化史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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にゃん吉
4
現代の「歌舞伎」が誕生するまでを叙述。歌舞伎を民衆の芸能と評価し、支配者から搾取を受けながらも、民衆らしい芸能を受容し、担えるまでに、経済的、精神的に成長した民衆の誕生という前提が整い、そこに、出雲の阿国が登場して、傾き踊りが始まり、演劇的要素を有していって‥と、歌舞伎誕生の過程が分析されているのかなと思われました。その関係での叙述と思われますが、いずれにしても、雅楽、今様、田楽、猿楽、能、茶道に浄瑠璃等々と、古代から江戸前期(寛永頃)までの日本の芸能、芸術が広く触れられる体裁になっていて、面白い。2020/01/22
非日常口
2
旧漢字のためか風格を感じる。現代日本における古典芸能はお家元制度のためかどこか高尚かつ高価なイメージが付きまとうが、芸能はもともと民衆と共にあった。良・賤がわけられた歴史から中心・周縁の問題に、その間を移動する遊女たち。高貴な短歌に比べ連歌は好奇心旺盛な民衆が気軽に楽しみ関係を深めていくツールだったようだ。民衆的な茶寄合と貴族的な茶数寄。現実的な法華宗の思想が広がる中、市が立ち、町が生まれる過程で金貸しの土倉一派が暗躍し、モノが市場に溢れだす。伎楽から猿楽、歌舞伎が誕生した歴史を時代背景と共に追う。2013/06/25
はちめ
0
文字通り歌舞伎が完成されるまでの様々な芸能や工芸等の歴史が総覧してあるが、古い本なので図版が1枚もないのが残念。関係する図版を多数掲載して再版したらもっと楽しい1冊になると思う。 なお本書は漢字が旧字体なので、旧字体の読み込みの練習にもなります。2016/10/30
こんがら童子
0
手猿楽という形で能が興隆した頃から既に女性による演能が盛んに行われていたと言う記述は驚きだった。2010/04/26
うさを
0
古代の終わり頃から近世初頭にかけての芸能史。タイトルに歌舞伎とあるから、演劇の歴史かと思いきや、茶湯なども含んだ視野の広い記述になっている。律令制の崩壊を一つの契機に、種々の技芸が拡散し、権力と民衆のあいだを往還しながらその姿を変えていく様を描いているように読んだ。それは、この列島の精神の道行のようでもある。旧字、古文の引用、前提とする知識の多さなどにつまずき、十分に理解しながら読んだとは言えないが、それでも勘所のようなものは多少つかめたような気がする。2023/06/03