出版社内容情報
南アメリカの太平洋岸に沿ってインディオが築いた壮大な一大帝国は,征服者スペイン人たちの目をみはらせた.巨大な神殿,雄渾な土器,石の彫刻ならびに黄金細工をともなったこの文明は,旧大陸のメソポタミア,ナイル,黄河の古代国家に匹敵するものとして注目される.数回の発掘調査の体験と多年の研究成果をもとにインカの謎を探る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
42
【始原へ22】古い本が続く。「インカ帝国探検記」(1961)の英文学者・増田義郎をインカに引きずり込んだのが泉靖一だった、と同書網野徹哉(善彦の子!)の解説にあったので、さぞかしアンデス考古学の先達なんだろうと思い1959年の本書を読むと、もともと国文学から文化人類学に転じた泉自身も1956年に初めてペルーへの「貧乏旅行」を試み、「何もかも放り出してアンデス文明の研究に打ち込んでみたく」なった(p269)とある。3年間の欧米での研究とペルーでの発掘調査の成果が本書。数年後の増田義郎と同じではないか。↓2021/06/30
kenitirokikuti
6
大学図書館にて。1959年刊行の古い岩波新書である。青版349のD62。「エピローグ ーインディヘニスモー」。刊行時期がこうなので、アンデス近現代略史は講座派的である。1952年のボリビア革命政権による鉱山の国有、農地改革、産業の多角化は肯定的に語られる。インカ帝国は、生産手段は全部国有で、共同作業によって生産に従事、綿密な計画経済、人民の生活が未亡人や幼児にいたるまで保障。冒頭にはルイ・ボーダンの〈社会主義的帝国であった〉が引用されている。2023/04/28
薫風
3
約70年前初版の、日本におけるアンデス文明研究黎明期の知見が集約された一冊。古い情報が多々ありつつも、地球の反対側の文字を持たない古代文明について、日本の研究者がここまで調べていたことは純粋に驚きです。著者自身がアンデス地域の民族にインタビューした記録も豊富に記載されており、南米の文化人類学について学ぶ目的では、いまだに良書かと思います。2025/06/07
こおき
3
インカ帝国……というか、アメリカの先住民たちにたいして全く知識がなかった立場からすると、やや古い文献であったとはいえ、新鮮なことが多く面白かった。インカ以前の歴史文化はやはり情報不足な感が否めなかったので、ここらへんは最近の文献を読んでみたいところ。2020/04/09
naoto
3
1959年第1刷の古本。プレインカ時代からのことも書いてあり、興味深い。しかしいつ読んでも、スペインによる征服の話は気分が悪くなるな。2012/10/04