出版社内容情報
近代は,人間が既成の社会から自らを解放する努力によって生み出されたものである.では,その既成の社会とは一体何であり,人間はどのような努力によってそれを打ち破ったのか.中世から近代への転換期における思想の変革と原理形成の過程を鮮やかに描き出し,近代思想の遺産が今日の私たちにとってもつ意義を明らかにする.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
129
岩波市民講座での3回の講演を本にしたもので内容に比して比較的わかりやすい本だと思います。福田先生の本は昔読んだことがあり歯ごたえがかなりある感じでした。その後この本が出版され、昔を思い出しながら再読しました。政治思想史については日本の場合丸山先生の本をよく読みますが、西洋政治思想についてはこの本でまず梗概を理解するのがいいと思われます。2017/01/28
ふみあき
64
もう50年以上前の本だが、内容は全然古びてないし、いまでも充分勉強になる。と言うか、古典的な価値が認められるから、50年間も刊行され続けているのだろう。とは言いながら、161ページ以降の「結び 遺産と現代」の叙述は、ちょっとナイーブ過ぎて、さすがに時代的な制約を感じる。それは著者が「どんなに抽象的な理論でも、その政治思想が生まれました時代の問題、あるいはその時代の政治社会のあり方との関連をはなれて成り立つものではありません」と言っているとおり。2024/05/21
Ex libris 毒餃子
15
政治思想に関する講演録。社会契約説をベースに中世からルネサンスを経てフランス革命までの近代ヨーロッパの政治思想を解説。マキャベリ、ボーダンからスタートしてモーゲンソーまでカバーしています。2022/02/13
まさにい
13
いい本だった。市民講座で話されたせいか、比較的平易に書かれている。自然権の考え方がこの本を読んで初めて分かった気がする。制度を取っ払って、何もない状態から統治制度を分析するという手法のための手段だったのだ。これを知らないと、憲法の自然権思想は理解できないのだろう。そうだとすると、多くの憲法学者が自然権の理解を誤解している。2020/08/25
しゃん
13
三読目。出版時から40数年経過しても、その主張は今尚古びない。「少数の知的エリートだけが創造的な仕事を、しかも無目的におしすすめ、大多数の人間が徒食して、倒錯した感性への惑溺に気晴らしを求めるような未来図」(192頁)は決して著者の妄想ではないと最近でもしばしば感じる。本書は、語り口で書かれてるので読みやすいが、その内容は結構歯ごたえがある。これがわたしの理想的な新書の姿。これは、まさにそのような一冊。2016/11/04