内容説明
日露戦争時に参謀本部部員であった沼田多稼藏がその壮烈な戦闘経過と戦略の推移を綴った書物が、新たな戦争の渦中にある一九四〇年に再刊された。そのとき沼田は企画院第一部長陸軍少将。“国運を賭して戦う”こととはいかなるものか、その意味を物語る本書は、政戦両略についての貴重な資料でもある。
目次
作戰計畫及び開戰
開戰より四月下旬に至る情況
鳳凰城、岫巖、得利寺の占領
遼陽に向つてする前進計畫
滿洲軍の北進
遼陽附近の會戰及び旅順要塞第一囘攻撃
沙河會戰及び旅順要塞正攻撃の開始
沙河對陣及び旅順要塞の攻略
日本軍の決戰準備及び墨溝臺附近の會戰
奉天會戰
奉天會戰後の情況
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Tomoichi
21
大正期に書かれた本なので、旧漢字だし、構成が軍人さんの報告書のようになっている(まあ軍人さんが書いているのだから仕方ない)ので、読むのに結構苦労しました。当たり前ですが、多少の美辞麗句はあるが、基本は無味無臭の報告書なので、「坂の上の雲」のような感動はありません。でもこの報告書を読めば、実際どのような論理で各軍事行動が始まりどう終わったか理解でき収穫の多い読書になりました。戦前の文章によく出てくる「而して」ってなぜ戦後使わなくなったのかな?2025/03/30
Ohe Hiroyuki
5
陸軍参謀本部の戦史編纂担当であった著者による日露戦争史である。主に陸戦(すなわち日本海海戦には焦点は当たらない)が紹介されるが、現場の先頭模様だけでなく、軍令・軍政の観点から広く触れられており、日露戦争をリアルに感じることが出来る一冊である▼原著は大正時代であり、文体も旧仮名遣いである。大変興味深いのは、この本が昭和15年(紀元弐千六百年)に記念復刊され、岩波新書として世に出された点である。お読みいただければわかるように、決して日本礼讃の本ではない。日華事変が長引く中、思うところがあったのかもしれない。2025/12/06




