出版社内容情報
インドにおける零の発見は,人類文化史上に巨大な一歩をしるしたものといえる.その事実および背景から説き起こし,エジプト,ギリシャ,ローマなどにおける数を書き表わすためのさまざまな工夫,ソロバンや計算尺の意義にもふれながら,数学と計算法の発達の跡をきわめて平明に語った,数の世界への楽しい道案内書.
内容説明
インドにおけるゼロの発見は、人類文化史上に巨大な一歩をしるしたものといえる。その事実および背景から説き起こし、エジプト、ギリシァ、ローマなどにおける数を書き表わすためのさまざまな工夫、ソロバンや計算尺の意義にもふれながら、数字と計算法の発達の跡をきわめて平明に語った、数の世界への楽しい道案内書。
目次
零の発見―アラビア数字の由来
直線を切る―連続の問題
著者等紹介
吉田洋一[ヨシダヨウイチ]
1898‐1989年。1923年東京大学理学部数学科卒業。専攻は数学
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
91
久々ミンツブで本書の題名を目にした。多分、学生時代に読んだ。これは改版かな。旧版で。分からなくとも、兎に角 数学に触れたくて。書庫に残ってるかな。今、読んでいる本の著者も本書に夢中になったとか。きっと今、読んでも楽しめそう。
molysk
76
15世紀ごろの西欧で、計算手法が変わった。従来の算盤が、筆算に取って代わられたのだ。筆算には、位取り記数法を用いる。例えば、「202」の最初の2は二百を、最後の2は二を表す。算盤と位取り記数法で、桁の表現は似ているが、異なる点がある。零の表記である。算盤は玉がないという状態に過ぎないが、位取り記数法では「0」の表記が必要だ。すなわち、零の概念が必要なのだ。膨大な数の表記に優れ、計算が容易な位取り記数法は、科学技術の発展をもたらした。その影には、無名のインド人による、零の発見という画期的な功績があった。2022/09/07
しょーた
67
【図書館本】竹内薫さんや児玉清さんがオススメしていた名著と名高い本。『零の発見』と『直線を切る』の二章構成。アラビア数字が世界に与える影響の偉大さたるや計り知れないものがあると感じさせられた。一方で、藤原正彦さんや桜井進さんが書かれた数学本の方が面白いと感じてしまう自分もいた。零の発見が、エジプトやローマでなく、なぜインドなのか?という疑問を、宗教や文化、環境のどういった違いから発見できたのかを述べた本かと勝手に期待してしまった。零の発見者や発見した時期は正確には分かっていないらしい。一説には6世紀頃。2014/04/02
みつ
34
戦前に初版が発行された岩波新書。約半世紀前の高校時代に読み、今回は2004年発行時のものでの再読。数学に関する著書は時代の流れに翻弄されないことを実感。とともに、初版から40年を経た1979年の改版でコンピュータに関する記述が加わることからも、表題にもある「零の発見」(ひいては位取り記数法)が、現在の技術文明までいかに大きな意味を持つかを示す。数字をいかに表示するかを古代文明まで遡り、紙や鉛筆の発明などとも絡ませながら読ませる。自分のように数学が苦手なくせに数学(の初歩)好きな人間には格好の名著。(続く)2022/01/08
Miyoshi Hirotaka
32
無名のインド人が発見した零。これがなければ筆算もコンピューターもない算盤の世界。今でも地球が動いているといっただけで投獄の憂き目にあったに違いない。インドの記数法がイスラム世界に伝わったのは8世紀。それまで、エジプト、ギリシア、ローマには幾千年の時が流れたが、ついに零は発見されなかった。さらに、フランク王国がサラセン帝国に勝利したため、イスラム学芸のヨーロッパ流入が遅れた。これは今でも不幸な勝利。計算は算盤、記録はローマ数字という習慣が放置された。このため商業は発達したが、科学が停滞した時代が長く続いた。2014/12/26