出版社内容情報
天皇と結びつくことで諸国の自由通行権などの特権を享受し、山野河海という境界領域に生きた中世の「職人」の姿を通じて、天皇制の本質と根深さを問うた代表的著作。供御人に関する史料の再検討から「大地と海原」への天皇の支配権とその淵源にある「本源的権利」に迫る第一部は、論文発表時から学界に衝撃を与えた。
内容説明
天皇と結びつくことで諸国の自由通行権などの特権を享受し、山野河海という境界領域に生きた中世の「職人」の姿を通じて、天皇制の本質と根深さを問うた代表的著作。供御人に関する史料の再検討から、「大地と海原」への天皇の支配権とその淵源にある「本源的権利」に迫る第一部は、論文発表時より学界に衝撃を与えた。(全2冊)
目次
序章(津田左右吉と石母田正;戦後の中世天皇制論;非農業民について)
第1部 非農業民と天皇(天皇の支配権と供御人・作手;中世文書に現われる「古代」の天皇―供御人関係文書を中心に;中世前期の「散所」と給免田―召次・雑色・駕輿丁を中心に)
第2部 海民と鵜飼―非農業民の存在形態(上)(海民の諸身分とその様相;若狭の海民)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
白隠禅師ファン
13
供御人等の職能人は、鎌倉末・南北朝時代までは天皇と結びつき、給田畠(給免田)や自由な通行権を持っていたが、南北朝時代以降は次第に被差別の対象に。職人を捉える上で、南北朝時代を一つの分水嶺とする説は、おそらく網野氏が初出かな。2024/11/14
アメヲトコ
9
1984年単行本刊、2008年著作集収録(本書の底本)、24年文庫化。網野氏の代表的著作の一つですが、歿後20年(!)を機に岩波文庫から読みやすいかたちで刊行されました。中世の天皇の存在意義を非農業民との関わりから解こうとする壮大な内容で、とりわけそれまで偽文書として切り捨てられていた供御人所持の文書を再検討し、そこから非農業民の世界の実像を浮かび上がらせようとする方法は興味深いです。今読むとちょっと強引かなと思う箇所もありますが。上巻は第二部「海民と鵜飼」の途中まで。2025/04/30