内容説明
反ファシズム活動の罪で政治囚として一僻村に流刑に処された作者=主人公カルロ・レーヴィ(1902‐75)が目のあたりにした、南イタリアの苛烈な現実。現代文明から隔絶した、呪術や神話が息づく寒村での生活を透徹した視線で描きだす、戦後のイタリア文学を代表する傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
50
ファシズム下のイタリア、反体制運動により著者が流された南イタリアの寒村での出来事や人々との交流を綴った一冊。思想的背景は別として、中心となっているのは農民との交流。貧に苦しめられる人々を描いているが、それでも著者の筆にかかると何故か牧歌的な印象を抱くこともしばしば。現実が突き抜けて幻想に至っているのかなあ。どこかマジック・リアリズムを思い起こさせられる。農村と国家の問題がキリスト教と異教的なものに通底する部分はまさに圧巻でもあった。解説も著者と村の現在の様子まで詳しく説いてあり、内容を理解するには必読。2017/06/16
syota
29
イタリア・ネオレアリスモの代表作と言われる作品。作者が1935年に反ファシズム運動で逮捕され、深南部の最貧地帯であるルカニア州(イタリア半島を長靴に見立てると土踏まずの部分)へ国内流刑されたときの体験を小説仕立てにしている。多少の脚色はあるにしても、ほぼルポルタージュに近い。荒涼たる大地にしがみつくように生きる極貧の農民たちと、ファシストに同調し権勢を振るう一部の有力者。20世紀の西欧でありながら呪術や魔女の秘薬が横行し、狼男や妖精を本気で信じる中世さながらの世界がそこにあった。(続く)2019/05/31
ケイトKATE
28
ムッソリーニ政権によって政治犯として南イタリアの僻地に流刑にされたカルロ・レーヴィ。そこは、文明から隔絶された貧しい村であった。医療も行き届かず、医師免許を持っていたレーヴィは医療活動を行うが、妬みから現地の医師から邪魔されるエピソードは、閉鎖的な村社会を象徴している。救いようのない話が多い反面、文明から離れていることから、村に独自の風習が息づいている話は村人達の誇りを感じた。中央政府がイデオロギーによって地方社会を支配しようすることは不可能だというレーヴィの指摘は、大いに納得できる。2024/09/20
YO)))
25
大変な傑作。反ファシズムの罪で流刑された作家の見た南イタリアの寒村。国家と権力の端末としての村の生活を描きつつ、民俗学的時には魔術的ですらあり、全的に人間というものが語られている凄みがある。解説では、舞台の村が現在では名所化されている様子や、登場人物、特に悪役的に描かれている人たちが小説に不満を持っていたことなどが述べられていて面白い(興醒めする向きもあるか)。「死都ブリュージュ」なんかよりは好意的に受け止められていそうではある。2016/11/13
てれまこし
16
自分が柳田国男の論文を書いてるとき、友人のイタリア人がこの本を勧めてくれたことがあったが、その頃はイタリアと日本が比較できるとは思ってなかったから聞き流してしまった。今になってあのとき読んでおけばと思った。後になって自分の別の論文についてイタリアから問い合わせがあったりして、イタリアでも民俗学が盛んなんだなと思って意外に思ったんだけど、ロマン主義ではなく啓蒙思想と民俗学の関係という自分の関心を、多くのイタリア民俗学者たちも共有してるらしい。イタリア統一は表面的であってまだ南部は別の時間に生きてるという認識2022/08/07
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