出版社内容情報
東欧ユダヤ人の日常言語「イディッシュ」。イディッシュ作家のほとんどは、ホロコーストや反ユダヤ主義を逃れて世界各地を転々とし、自らのアイデンティティーの拠り所であるイディッシュで文学を書き継いだ。ディアスポラの文学。
内容説明
東欧系ユダヤ人の日常言語「イディッシュ」―。ホロコーストや反ユダヤ主義を逃れて世界各地を転々とし、アイデンティティーの拠り所であるイディッシュを創作言語として選び取った作家たちが、それぞれの地で書き残した十三の短篇。ディアスポラの文学。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
111
これは、東欧系ユダヤ人が使っていた言語でかかれた短篇作品集です。まるっきり初めての作品ばかりでした。「屋根の上のヴァイオリンひき」というミュージカルの原作者が描いた作品も収められています。ナチスやソヴィエトでも迫害されてきたことがあるせいか若干暗く感じるものがあったり、隠喩的な作品もあります。また宗教的な儀式などをいれたりまた土俗的な感じもします。訳者による解説が秀逸です。2019/04/17
藤月はな(灯れ松明の火)
78
「つがい」は二羽の鶏へ男女の迫り来る現実への思考の差を見事に描き出している素晴らしい作品です。でもグロテスクな筈なのに悲壮感はなく、どこかコミカルなのは読み手が結局は人間視点だからか。「ブレイネ嬢の話」も強権的な父親の立場が反転する場面も鮮やか。一方で「みっつの贈り物」の犠牲者の報われなさに絶句。ホロコーストへの恐怖を描いた「シーダとクジーバ」、一足違うがために報われない愛と孤独の「カフェテリア」も跡を引きます。そしてままならない自分と煌びやかに見えるサーカスの実情に哀しみに満ちる「塀のそばで」にしみじみ2018/04/10
ちえ
47
イディッシュ語とは東欧系ユダヤ人の日常言語(ヘブライ語は聖なる言語)だという。世界各地に住むイディッシュ語作家の短編集は、民話風なものから大戦後のニューヨークを舞台にしたものなど様々。そしてどれも苦しさを含みながら深いところで力強さを感じるものだった。どの話も歴史的に差別や迫害を受け続けてきたことを感じさせる。ともに幻想的な「カフェテリア」「マルドナードの岸辺」が好きだ。2021/08/27
踊る猫
29
浅学非才の身なのでユダヤ人についての知識などまるでない状態で読んだのだけれど、流石に翻訳はこなれていて不自然さを感じさせない。神話的な話からエッセイ的なもの、オーソドックスなフィクションまで意外とヴァラエティに富んでいて濃密な一冊という印象を受ける。だからこれは再読が必要な、取り扱いとしては難しい本と言えるかもしれない。読みやすくて奥が深い、という……逆に言えばつまらない話もあるのだけど、こちらが「読めてない」可能性も高いと考えている。興味を引かれたのはシンガー(ジンゲル)。早速傑作選を読んでみるつもりだ2018/02/14
maja
21
東欧にルーツを持つイディッシュ語で描かれた短編集。「イディッシュ文学の入門的な一冊になりえれば」との訳者の解説が嬉しい。編まれた作品群はどの作品も哀しみの表情を持つがエネルギ-は強い。一作目「つがい」の後味と筆者名の「あなたに平和を」という意味にしんみりとなったまま、二作目の「みっつの贈り物」の無情さにへこたれる。「天までは届かずとも」でリトアニア人に興味がわく。見知らぬ世界の入口の扉が開いてくるようだ。「塀のそばで(レビュー)」「カフェテリア」「兄と弟」など印象に残った。2019/07/31