岩波文庫
大使たち〈下〉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 432p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003725122
  • NDC分類 933
  • Cコード C0197

内容説明

五十五歳にして不意に訪れた“青春”の思いに心弾ませる主人公ストレザー。彼は思いがけず“生きる”ことの素晴らしさを知ったのだ。想像力豊かな主人公ただ一人に“視点”を限定し、その経験と意識の変化を、語り手は影のように寄り添って克明に描き出す。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

346
イギリスに渡った当初、チャドをマサチューセッツに連れ帰ることはストレザーにとって当然なすべきことのはずであった。ところが、彼はパリの美に幻惑され、信じて疑わなかったはずの自己の価値観さえもが揺らぎだす。そこで送り込まれたのが第2の大使セアラだが、これまたストレザーと対照的に描くことでストレザーの心理を炙り出す。よく引用される「力の限り生きたまえ」の言葉はチャドにとっては有効ではあっても後半生のストレザーにはもはや手遅れで、取り返すことはできない。彼はいわば「遅れてきた青年」でもあったのである。2021/08/13

ケイ

123
なんなのだろう、この後に残る焦燥感は。どうして、スレイザーはこうも真っ直ぐでややこしいのだろう。結局は、スレイザーは親子に振り回されただけで、彼は金持ち親子に知らずと加担し周りを振り回した。よくできた構成だと思う。度胆をぬく感じだ。納得できないのは、チャドのような男に魅力を感じられなかったから。そして見たことのないチャドの母親にも。頭に残るのは、ヴィオネ伯爵夫人の美しさと、マライア嬢のやるせなさだ。特に作者が見せつけるヴィオネ伯爵夫人の高貴さにはうっとりとした。その筆力だけですでに感服する。2016/12/12

syaori

52
結局、ストレザーの「目を開く」出来事があり、彼が「見た」美しいものの裏側も露わになるわけですが、この物語が愚かな男の哀れな喜劇に堕さないのは、物語を通して彼のあの言葉が響いているからなのだと思います。「力の限り生きたまえーそうしないのは間違いだよ」。その言葉が、パリの米国人たちの「ロマンス」や気高いヴィオネ夫人の「あさましい」姿、洗練されても変わらぬチャド軽薄さ若さ、そんな彼らを「見た」ストレザーが経験した「至福と悲惨」を通して響く時、すべてが再び美しいものとなることを、作者は見せてくれたように思います。2019/07/16

NAO

52
下巻では、近代的な事業家と芸術という二つ目のテーマが現われてくる。ヨーロッパの名門一族との付き合いは、チャドを大人の男に成長させ、彼に自信をつけさせている。チャドはパリで美術品を蒐集するだけでなく、この地に於いてこれからの時代は商品を売る際に広告が重要な役割を担うであろうことをも見抜いている。のほほんと遊んでいるように見えながら、実はアメリカでの自分の位置をしっかりわきまえた上での修行を積み、将来の見通しを立てていたチャドとストレザーの違いはあまりにも大きい。2017/03/15

うらなり

33
91/G1000 国名に、お!を付けても様になるのはフランスだけである。特にパリの魅力を、力を、夫人を通してまざまざとみせつけられる。緊張感のただよう会話が続き、問いに対して、問いで答えるような本音の探り合いの連続で、展開の矛盾も感じることなく読み進めることができる。生きることとは、何かという問いかけが全編を通して読者に鋭く問いかけて来て、充実した読後感がえられました。 2023/10/20

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