出版社内容情報
永井荷風(一八七九―一九五九)は、三十八歳から死の前日まで四十一年間、日記『断腸亭日乗』を書き続けた。文章の奥から、時代が浮かび上がる。全文収録。(三)は、戦前の代表作「つゆのあとさき」発表前後の昭和四年から昭和七年までを収める。初めて詳細な注解を付した(「注解」「解説」=多田蔵人)(全九冊)
内容説明
永井荷風は、三十八歳から死の前日まで四十一年間、日記『断腸亭日乗』を書き続けた。『つゆのあとさき』のころ、都市がひろがり、体制が揺れるなか、荷風は新しい人々があらわれた町を歩く。(三)は、昭和四年から七年まで。
目次
昭和四(一九二九)年
昭和五(一九三〇)年
昭和六(一九三一)年
昭和七(一九三二)年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
春ドーナツ
13
前巻の書影で荷風さんは絵もお上手だなと思っていたら、本書は帯の文言を流用すると、「大東京」を散策して、日記帳にスケッチも描かれていて、風景画がたくさん収録されている。とても味わい深し。つげ義春さんと安西水丸さんと沢野ひとしさんの画風をリミックスしたような感じを抱く。地図も何点かあって、地図って実際に書いてみると大変難しいのだけれど、一筆でさらさらとされているようで唸る。何の花か分かれねど、それを愛する気持ちが伝わってくる。人物画が2点あり、風景とは異なる味わいがある。岩波文庫は二分冊の抄録版もあるけれど、2025/03/28
iwasabi47
2
お歌さん(とその裏での浮気)との別れ後に墨東へ逍遥、芝居人の吞みから遊民の吞みに変わる。よく歩くからばったり道先で女性ともよく遭う。解説もよみどころ。2025/04/18
はるたろうQQ
1
季節の移り行きを愛でる。「一重の桜紛々として雪の如し」「雲気鬱勃、風絶えて溽暑甚し」「晴渡りて雲翳なし、蜻蛉翩翻落花の如し」「雪もよひの空墨の如し」中洲病院から散策する水都東京の風景描写も佳い。「幾艘となく河岸に繋かれたる荷舩より飯たく石炭殻の烟立昇りて雲の如し」「永代橋上に月の昇るを見る、月嶋のかなたにたな曳渡るさま清親の筆の如し」 一方で自他共にある珍奇・醜悪なる人の営みの数々。「老年に及びて情痴猶青年の如し」お歌の発狂事件と別れ。潤一郎と春夫の細君譲渡の葉書も録す。意外に犬(ポチ・シロ)を可愛がる。2025/10/11