出版社内容情報
「私は憎しみを共にするのではなく、愛を共にするよう生まれついているのです」――祖国に攻め寄せ倒れた兄の埋葬を、叔父王の命に背き独り行うアンティゴネー。王女は亡国の叛逆者か、気高き愛の具現者か。『オイディプース王』『コローノスのオイディプース』と連鎖する悲劇の終幕は、人間の運命と葛藤の彼岸を目指す。新訳。
内容説明
「私は憎しみを共にするのではなく、愛を共にするよう生まれついているのです」―祖国に攻め寄せ斃れた兄の埋葬を、叔父王の命に背き独り行うアンティゴネー。王女は亡国の叛逆者か、気高き愛の具現者か。『オイディプース王』『コローノスのオイディプース』と連鎖する悲劇の終幕は、人間の運命と葛藤の彼岸を目指す。新訳。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
135
訳が高尚すぎて、意味を汲み取るのに少々苦労したが、慣れてくると味わいのある文章。アンティゴネーだけは幸せになって欲しかったのだが、オイディプスからの三部作の最後となればそれも仕方ないか。これが悲劇の真髄だろうか。気持ちが落ち込んでしばらくは再び浮揚出来ないほど、運命から逃れる術のなさに絶望させられた。2017/10/26
Tonex
35
『オイディプス王』→『コロノスのオイディプス』→『テーバイ攻めの七将』と時系列順に読んできたが、だんだんつまらなくなってきたので、これはもう読まなくてもいいかなと思ったが、読書メーターのレビューを見たら面白そうだったので、読んでみた。▼アンティゴネーはオイディプス王の娘。過去作にも登場するおなじみのキャラクター。本作はストーリーがわかりやすいわりに論点が多い。▼読みやすい翻訳。注釈や解説も丁寧で充実していて、ギリシャ悲劇全体の入門書にもなっている。頁数が多いのはそのため。読んで良かった。2016/03/27
加納恭史
33
シモーヌ・ヴェイユ著「前キリスト教的直観」でアンティゴネーの話があり、やっとこの本で本物を確認できる。作者のソポクレスは家柄、才能、容貌、人格、あらゆる面で欠けるところがなく、ギリシャ黄金時代の理想を体現した人物。伝記では好色で茶目っ気たっぷりな人物とも伝えられる。だが、その深刻な作品とは乖離がある。彼は人間を越えた英雄的存在に思いを馳せ、また人間の生がいかに深い闇を抱え、いかに苦に満ちているかを追及して止まない。アンティゴネーの科白「私は憎しみを共にするのではなく、愛を共にするように生まれついている」。2022/07/21
こうすけ
31
国家への反逆者として死んだ兄を、埋葬し弔おうとする妹・アンティゴネーの物語。埋葬すれば同じく反逆者として処罰されてしまうが、家族としては見捨てることはできないというジレンマ。社会のルールに従うのか、自分自身の倫理観に従うのか。ほかの姉妹が権力者に忖度して埋葬の協力を断ったり、「たとえ間違っていても、権力者の言うことには従うべきだ」というようなセリフが出てきたり、かなり現代的なテーマを扱っている。とてもとても面白かった。2020/10/04
tom
21
オイディプスを読んで、参った参ったと思って、関連本を入手。そのまま、机の上に置いたまま、ほぼ一年。しょうもない旅行に出かけることになって、旅の道連れに。すごいねえ、ギリシャ悲劇。若い時に読んで、心が震えたけれど、この歳になっても、やっぱり震える。登場人物は、全員が死んでしまうという物語だけど、その悲惨さ、人のこだわりの残念無念さ、2000年以上昔の物語が、現在に通じるなんて、何も言えないような不思議さが目の前に現れたような印象。ただし、翻訳は、オイディプスの方が私には好み。2017/04/12
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