出版社内容情報
「私は憎しみを共にするのではなく、愛を共にするよう生まれついているのです」――祖国に攻め寄せ倒れた兄の埋葬を、叔父王の命に背き独り行うアンティゴネー。王女は亡国の叛逆者か、気高き愛の具現者か。『オイディプース王』『コローノスのオイディプース』と連鎖する悲劇の終幕は、人間の運命と葛藤の彼岸を目指す。新訳。
内容説明
「私は憎しみを共にするのではなく、愛を共にするよう生まれついているのです」―祖国に攻め寄せ斃れた兄の埋葬を、叔父王の命に背き独り行うアンティゴネー。王女は亡国の叛逆者か、気高き愛の具現者か。『オイディプース王』『コローノスのオイディプース』と連鎖する悲劇の終幕は、人間の運命と葛藤の彼岸を目指す。新訳。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
136
訳が高尚すぎて、意味を汲み取るのに少々苦労したが、慣れてくると味わいのある文章。アンティゴネーだけは幸せになって欲しかったのだが、オイディプスからの三部作の最後となればそれも仕方ないか。これが悲劇の真髄だろうか。気持ちが落ち込んでしばらくは再び浮揚出来ないほど、運命から逃れる術のなさに絶望させられた。2017/10/26
ehirano1
92
もうね、「何やってんのあんた達はっ!」と言うことなかれwww。世代を超えて連綿と続き連鎖する悲劇と呪いのお話もようやく終わったのに、なぜかなんだか寂しくなってしまったのは、三部作に意外と没入していたんだなぁと古典の威力を改めて思い知らされたのでした。2025/09/19
加納恭史
36
シモーヌ・ヴェイユ著「前キリスト教的直観」でアンティゴネーの話があり、やっとこの本で本物を確認できる。作者のソポクレスは家柄、才能、容貌、人格、あらゆる面で欠けるところがなく、ギリシャ黄金時代の理想を体現した人物。伝記では好色で茶目っ気たっぷりな人物とも伝えられる。だが、その深刻な作品とは乖離がある。彼は人間を越えた英雄的存在に思いを馳せ、また人間の生がいかに深い闇を抱え、いかに苦に満ちているかを追及して止まない。アンティゴネーの科白「私は憎しみを共にするのではなく、愛を共にするように生まれついている」。2022/07/21
Tonex
36
『オイディプス王』→『コロノスのオイディプス』→『テーバイ攻めの七将』と時系列順に読んできたが、だんだんつまらなくなってきたので、これはもう読まなくてもいいかなと思ったが、読書メーターのレビューを見たら面白そうだったので、読んでみた。▼アンティゴネーはオイディプス王の娘。過去作にも登場するおなじみのキャラクター。本作はストーリーがわかりやすいわりに論点が多い。▼読みやすい翻訳。注釈や解説も丁寧で充実していて、ギリシャ悲劇全体の入門書にもなっている。頁数が多いのはそのため。読んで良かった。2016/03/27
こうすけ
32
国家への反逆者として死んだ兄を、埋葬し弔おうとする妹・アンティゴネーの物語。埋葬すれば同じく反逆者として処罰されてしまうが、家族としては見捨てることはできないというジレンマ。社会のルールに従うのか、自分自身の倫理観に従うのか。ほかの姉妹が権力者に忖度して埋葬の協力を断ったり、「たとえ間違っていても、権力者の言うことには従うべきだ」というようなセリフが出てきたり、かなり現代的なテーマを扱っている。とてもとても面白かった。2020/10/04




