内容説明
年もわが世もけふや尽きぬる―。柏木との密通により薫を生んだ女三宮、秘密を源氏に握られ、その重圧に耐えかねて死ぬ柏木。病がちだった紫上もついに亡くなり、悲嘆に暮れる源氏は、世を去る準備を調えつつ、物語から姿を消す。柏木から幻までの六帖を収録。
目次
柏木
横笛
鈴虫
夕霧
御法
幻
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
76
薫を抱いて、我が身をかつての帝に、また、柏木を若き日の自分に重ね合わせる源氏。だが、一途に恋い焦がれた女性に不義の子を産ませはしたものの自らは輝き続けた源氏と憔悴して死んでしまう柏木のなんという違い。真面目そのものだった夕霧がここにきてまさかの浮気はこれも父の血かいう感じだが、そんな夕霧も、いまいち魅力に乏しい。そうはいっても、紫の上、源氏と相次いで姿を消し、物語は新たな局面へ。2020/02/20
藤月はな(灯れ松明の火)
65
蛙の子は蛙な巻。柏木は親友への不義理などの良心の呵責で儚くなり、女三宮は出家を求める。そして光源氏の事を信じて女三宮を預けたのに娘が魂が掠れる程の悲しみと後悔を味わい、出家を求むまでになった事に忸怩たる朱雀上皇は遂に光源氏に嫌味を言う。朱雀院贔屓としては「寧ろ、よくぞここまで辛抱して気を遣われましたね。今までが心苦しかった分、どんどん、ぶちまけてください!」と思ってしまったのです。紫の上は望みが叶わず、先立ってしまう。死の匂いが濃い分、悲哀も強い。また、薫の生涯に付き纏う翳りはここから始まるのだ。2019/08/16
syaori
55
柏木~幻。紫の上の死を描く「御法」と、その後の一年を追う「幻」の美しさが印象に残ります。小説とは「人間存在とは何か」「そのポエジーはどこにあるか」という問いに答えるものだとクンデラは言いましたが、これほど豊かに匂やかにこの問への答えを示せる小説はそうあるものではないと思います。源氏と紫の上を中心とした人々の苦しみと幸福とその無常が、生の虚しさと儚さと充実がこの御法から幻の流れのなかの澄んだ美に収斂されてゆくようで、ただただ圧倒されました。春の光の中に消えてゆくような源氏の姿を名残おしく眺めながら次巻へ。 2021/04/19
金吾
27
柏木の自壊、夕霧の暴走が印象的です。この当時の権力者はこれしかないのかと思ってしまいます。またどんなに相思相愛で結婚してもこうなってしまうのかと虚しくなります。やりたい放題源氏の紫の上への気持ちが伝わる「御法」「幻」は好きです。2024/01/05
tsu55
22
「柏木」から「幻」まで。 栄華を極めた源氏だが、晩年は悩みの多い時を過ごすことになった。 「柏木」では、不義を働いた柏木を赦すことができず、死に追いやってしまい、慙愧の念に駆られることになる。さらに「御法」では、最愛の紫の上を喪って、悲嘆のあまり放心状態に。人生いいことばかりというわけにはいかないんだな。 それにしても、柏木にしろ夕霧にしろ、なんて不器用なんだろうかと思う。源氏ならばもっとスマートに女を落とせただろうし、女を不幸にさせなかっただろう。命を落とすこともなかったんじゃないかな。2020/11/12
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