出版社内容情報
愛といってもさまざま.恋愛ばかりが愛ではない.小説家たちはそれぞれの視角から愛に光を当て,愛の諸相を垣間見させてくれる.愛を描くことは人生を描くことだ.カルヴィーノ,坂口安吾,プラトーノフ,岡本かの子,D.レッシング,三島由紀夫,R.ギャリ,吉田知子,ユルスナール等々,粒選りの逸品二十数篇を収録.
内容説明
愛といっても種々様々。作家たちはそれぞれの視角から愛に光を当て、愛の諸相を垣間見させてくれる。カルヴィーノ、坂口安吾、プラトーノフ、岡本かの子、ユルスナール、三島由紀夫、R・ギャリ、吉田知子、D・レッシングなど、粒選りの二六篇が交錯する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
75
日本と世界の作家の様々な愛に関する短編を、中村邦生氏が選んだもの。ロシア、アイルランド、ベトナムまで、幅広い。芥川、安吾、太宰、三島、堀などの日本を代表する作家の短編よりも、愛という意味では、外国の話に圧倒的にひかれた。マンスフィールドの「ささやかな愛」。3ページで、惨めさを隠してかりそめの美しさを生みだす夜の優しさを描く。編者の訳も流れるようで素晴らしい。原題はleves amores。 プラトーノフの『帰還』。戦争の愚かさ、それに従事する男の心の醜さ、子供の老成。最後に家族の愛がむき出しになる。2014/12/24
藤月はな(灯れ松明の火)
52
子供達が迷い込んだ「魔法の庭」には何もかもが備わっており、魅力的である。しかし、子供たちはそこで思う存分、安らいで遊ぶことはなかった。庭には何故か、分別を強いられるようなものがあったからだ。きっとあの庭はエデンのようなものだったのだろうと私は思う。「いたずら」はほんの些細な事が後々も心を温める。そんなかけがえない一瞬になる事は誰しもあるのだ。「燃ゆる頬」は再読。矢張り、男色を匂わせる場面よりも脊椎カリエスの跡を撫ぜる場面の方がエロティックだ。だがラストの若き生命力の伸びやかさによってその恍惚と淫靡さは霧散2024/03/31
azimuth
6
タイトルはまずいがアンソロジーとしてはよい。友愛、恋愛、同志愛、夫婦愛、敬愛、家族愛、その他さまざまな愛を扱う短編を集めているんですが、有名な作家のあんまり有名でない作品が多くて、この人こんなの書くんだなあと開眼したり。(特に安吾は意外だった)残酷な若さを描いた「いたずら」、世界がひっくり返る「ささやかな愛」、癒し的立ち位置の「扉の彼方へ」あたりが好き。でもほんとは全部いい。解説にあるように、「落ち合ったけしき」の趣。2011/10/17
けろ
5
カルヴィーノ、プラトーノフ、チェーホフ、アンデルセン、岡本かの子、小林多喜二、宮沢賢治他多岐にわたる作家26篇からなる名作選集。特に印象に残ったのは三島由紀夫『雨の中の噴水』、そして編者である中村邦生の解説「アンソロジーの作法ー偶感」だった。「アンソロジーを魅力的なものにする作法とは、、、傑作のあいだに凡作を配すること(略)これは「愛」の問題域とひそかに重なる面もあるに違いない」。作法部分も十分読み応えがあったが、続いて他篇に勝るとも劣らない愛をテーマにした著者の「オレンジ色の思い出」。秀逸であった。2020/04/30
relaxopenenjoy
4
日本と海外作家の作品が半々くらい。既読作品もちらほらあるも、初めて読めた作家は嬉しい発見。気に入ったのは ロマン・ギャリ「地球の住人たち」 シャーウッド・アンダーソン 「とうもろこしの種まき」2023/11/22