内容説明
資本主義の根源を分析し、その独創的な閃きを厳密な論理によって体系づけ、二〇世紀の世界経済の指針となったケインズ『一般理論』。下巻には、第五篇「貨幣賃金と物価」、第六篇「一般理論の示唆するもの」を収録。充実の訳注、索引、文献一覧。
目次
第5篇 貨幣賃金と物価(貨幣賃金の変化;ピグー教授の『失業の理論』;雇用関数;物価の理論)
第6篇 一般理論の示唆するもの―短い覚書(景気循環に関する覚書;重商主義、高利禁止法、スタンプ付き貨幣および過少消費理論に関する覚書;一般理論の誘う社会哲学―結語的覚書)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Francis
10
名著の再読。ケインズの文章ははっきり言って難しくて意味を掴めているか心許ないが、大意として資本主義の発展に伴って資本財が社会に行き渡った状態になると資本からの限界効率が低下することによって利子率が低下する傾向が生まれる。こういった状況では民間投資に期待することは出来ないので、公共投資の重要性が高まり、同時に金利生活者も減っていく、と言うところか。まるで今の失われた20年下の日本を予見していないだろうか。巻末の宇沢弘文先生の解題と訳者間宮陽介先生の解説文も秀逸。難しい本なのでもう一度再読が必要かも。2014/06/27
Hiroshi
7
下巻は、⑤貨幣賃金と物価、⑥一般理論の示唆するものだ。が、上巻での大事なこととして、利子率は待忍に対する収穫ではなく、流動性を手放す報酬である。資本は耐用期間全体を通して初期費用を超過する収益を生む。資産を保有すると、「全収穫=資産の収益-持越費用+流動性プレミアム」となる。通常の資産は「持越費用>流動性プレミアム」だが、貨幣に限り「持越費用<流動性プレミアム」となる。資本の限界効率とは、不動産投資でいう投資の期待利回りの事のようだ。だがこの投資利回りは昔は高かったが、今日に至ると大変低くなって来ている。2024/05/05
逆丸カツハ
6
最後の宇沢弘文の解説があって助かった、バラバラだった個々の要素がちょっと繋がった。貨幣の価値を時限的に制限してはどうだろうと少し考えたことがあって、それと似たゲゼルのスタンプ付貨幣の話が出て驚いた。自分は誰もが貨幣を一定時間で手放すようになると環境負荷が大きいので無理だなと思ったが、別の貨幣代替物出てくるというケインズの指摘に驚き納得した。2021/11/27
home alone
6
上巻を踏まえて、ケインズの考える完全雇用に至る方法を述べている。最後の方で、富の平等化についても述べられている。現在の公共投資や再分配にケインズの影響は残っている。凄いですね2012/08/13
かんちゃん
5
残念ながら経済学的な素養がなさすぎてほぼギブアップ状態。なんとか最後まで文字を追ったが、「解題」で示されているように、ケインズ理論と経済の教科書的に言われていることはヒックスによる説明部分であって、ケインズの主眼はむしろ、完全雇用が成り立たないことと、それについて現実に即した説明と処方箋を与えることにある。ただ、そのために使われる要素のそれぞれが理解を超えているので、とりあえずは基本書に戻ります。2016/04/24