出版社内容情報
「われわれの政府は憲法の下にある。そうして憲法とは、国民が、これが憲法だというものにほかならない。」戦後憲法学を牽引した鵜飼信成(一九〇六―一九八七)が、施行から一〇年足らずの日本国憲法を一般向けに解説した書。独創性と先見性にあふれ、今なお異彩を放つ。豊富な知見を盛り込んだ註も読み応えがある。(解説=石川健治)
内容説明
「われわれの政府は憲法の下にある。そうして憲法とは、国民が、これが憲法だというものにほかならない。」戦後憲法学を牽引した鵜飼信成(1906‐1987)が、施行から10年足らずの日本国憲法を一般向けに解説した書。独創性と先見性にあふれ、今なお異彩を放つ。豊富な知見を盛り込んだ註も読み応えがある。初版1956年。
目次
第1章 憲法の本質(憲法の理論;憲法の意味;日本における近代的憲法の展開;憲法の改正と憲法の制定)
第2章 日本国憲法の基本主義(序説;国民主権主義;永久平和主義;基本的人権尊重主義)
第3章 基本的人権の体系(序説;個人権的基本権;社会権的基本権;基本権を確保するための基本権)
第4章 権力分立制の構造(権力分立の原理;立法過程;議院内閣制;司法権の独立;違憲審査制)
第5章 民主主義的な若干の制度(財政立憲主義;地方自治;天皇象徴制)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
48
現社の授業も、しばらくすると、人権の話も単元として結構ある(実教出版)。今から、準備を。第2章第4節「基本的人権尊重主義」は重要である(98頁~)。長い歴史を背景にもったものだから。マグナ・カルタ(大憲章)も既に暑かった。これは国王側で尊重宣約したのみ。保障手段は法的根拠なし、とのこと。第3章基本的人権の体系第3節「社会権的基本権」の(1)生存権も改めて重要(180頁~)。このスタグフレーション下で、健康で文化的な最低限度の生活をどう確保できるか? 国会中継、質疑。不安でしかない。。2022/10/08
ヤギ郎
9
憲法学者・行政法学者の鵜飼信成先生による憲法の概説書(教科書)。岩波全書で刊行されたものに石川健治先生の解説がついている。はじめに憲法というものについて、憲法学の役割について理論的な枠組みを提示する。それから日本国憲法を分析していく。逐条解説をするのではなく、条文の背後にいる憲法の理念を抽出し、著者の言葉でかみ砕いて説明している。明治憲法の下で展開されていた憲法学から、戦後憲法学への道標を示しているといえるだろう。なにより、憲法の教科書が文庫になっているだけでも有用な一冊である。2022/09/09
馬咲
3
国民向けに書かれた憲法解説の古典。各制度の憲法学における論点を、それらが要請された社会史的政治史的背景や当時の各国の学説を踏まえながら叙述するので、平面的な理論説明に留まらない立体的な見通しを与えてくれる。解説が本書の現代的意義を補足してくれる。当時まだ先駆的な「人権の私人間効力」や「二重の基準論」などの考え方を、著者は制度の持つ歴史性を丁寧に捉えることで可能にしたようだ。所与=現在における問題を発見し学問的に深く探究しようとする際に、対象について具体的歴史的な感覚を養うことの重要性を本書は教えてくれる。2022/08/26
フクロウ
2
法学が各歴史的段階を踏まえて克服すべき課題としっかりとりくんできたことを具体的に描出していくという手法であるから、未来予測に説得力がそれなりにあり、しかもそのとおりになっていることがいくつもある。英独仏に加え米も渉猟し当時の最先端学説の潮流をしっかり把握しており、さすがは東大美濃部門下。2022/07/08