内容説明
憲法が謳う自由と平等、アメリカの夢と現実。奴隷たちの七月四日を問いつめたダグラスと南北戦争後も遍見と格闘した男たち女たち。視野をアフリカへ世界へと拓いたガーヴィー。公民権闘争とその後の激動の時代をへて、今21世紀のオバマまで、21人の声を聴く。
目次
奴隷制度のもとのわれわれの悲惨な状態(D・ウォーカー)
アメリカ合衆国の奴隷たちへ(H・H・ガーネット)
女じゃあないのかね?(ソジャーナー・トゥルース)
奴隷にとって七月四日とは何か?(F・ダグラス)
根強く残酷な遍見(J・S・ロック)
法の前の平等(J・M・ラングストン)
公民権法案(J・T・レイピア)
南部の黒人女性(A・クラメル)
アトランタ博覧会演説(B・T・ワシントン)
世界の国々へ(W・E・B・デュボイス)〔ほか〕
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
84
訳を担当したのが、岩波文庫版『風とともに去りぬ』を翻訳した荒このみさんなので読みやすいです。『風とともに去りぬ』、『マーチ家の父』、映画『白い肌の異常な夜』でも描写されている、北部人の方が黒人差別が酷いと言う事実を訴えた「根強く残酷な偏見」に項垂れる。一方、「女じゃあないのかね?」と「黒い肌の私ってどんな感じ」は思わず、声に出して読みたくなる程のユーモアと熱量がある。そして「南部の黒人女性」は黒人女性が一概に美化されているのに対し、「今日のアメリカにおける黒人女性」ではその多様性に目を向けているのが時代的2018/01/23
秋 眉雄
23
『あそこの黒服を着た小柄な男が、こう言うんだね。キリストは女じゃなかったから、だから女は男と同じだけの権利は持てないって。キリストはどこから生まれたんだい?あなたたちのキリストは、どこから生まれたんだい?神と、それから、女からじゃないか。男は神と関係してないんだよ。/ソジャーナー・トゥルース』黒人であるということ以上に黒人女性であることへの意識。この演説集の中、概して女性の演説のほうがより興味を惹かれました。人間味が溢れ、それでいて抑制の効いたそれぞれの人物像を象った口調。そんな訳も素晴らしい重厚な一冊。2021/01/29
ロビン
19
1829年のD・ウォーカーから2005年のB・オバマまで、T・モリスンなど女性も含めた21人の黒人による演説を集めて編まれた一冊。これを読むと、白人によって唱えられた「黒人はこどものようなもの」だとか「黒人は隷属状態でいて幸福なのだ」という言説がいかに誤っているかが分かる。黒人たちは「魂がない」とまで言われていた。ないどころではない!本書に収められている演説はどれも知性的で見事である。F・ダグラスなどは雄弁すぎて「君が奴隷だったと誰も信じなくなるからもっと下手にした方がよい」と忠告される程だったという。2021/06/05
かふ
18
一番感動したのはフレデリック・ダグラス「奴隷にとって7月4日(独立記念日)とは何か」。この長い演説は黒人の虐げられてきた長い歴史のブルーズを感じる。キング牧師はやっぱ繰り返しの多さとかコール&レスポンスになりそうなゴスペル。マルコムX「投票権か弾丸か」のヒップホップ的なラップのような煽り。アイダ・B・ウェルズ=バーネット「この残忍な殺戮」はKKKのことなど。トニー・モリスンの「ノーベル賞受賞スピーチ」は文学的なあまりにも文学的な例え話で難しい。面白いけど。2018/05/13
無識者
16
独立宣言文や憲法(権利の章典)というのが多く登場する。実際に独立宣言文を見ると当時のアメリカの建国理念というものを、わかりやすい英語で書かれている。スピーチでは建国理念と現状のアメリカ社会の不一致という点が指摘される。こういう風にスピーチで独立宣言や憲法の内容から指摘できるのはちょっぴり羨ましいと思った。スピーチでも原文を参照してみると、わかりやすい英語が使われており、それがアメリカ文化なんだと実感。日本ではどうしても憲法を通じて戦い何かを勝ち取るという経験が浅いのかなと思った。2017/06/18
-
- 和書
- いずれ我が身も 中公文庫