出版社内容情報
第二次大戦下の1942年、ザ・タイムズ紙勤務時代のE. H. カーが戦後を見据えて発表した秩序構想。進行中の破局が19世紀秩序に根をもつとして、そこからの決別を唱え、20世紀的な現実に合わせた政治・経済・国際関係の変革の道筋を示す。ユートピア的思考が結晶化した本書によって、『危機の二十年』は乗り越えられた。
内容説明
第二次世界大戦の真っ只中の1942年、ザ・タイムズ紙に勤務するE.H.カーが戦後を見据えて発表した秩序構想。破局の根本原因が19世紀秩序への執着にあるとして、そこからの決別を唱え、20世紀的な現実に合わせた政治・経済・国際関係の変革の道筋を示す。ユートピア思考を結晶化した本書は、『危機の二十年』を超える地平を開いた。
目次
序章
第一部 根本的諸問題(戦争と革命;民主主義の危機;集団的自己決定の危機;経済的危機;道徳の危機)
第二部 政策的構想案(イギリス本国;イギリスと世界;イギリスとヨーロッパ;イギリスとドイツ;新しいヨーロッパ)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬参仟縁
49
最も重要な政治争点は、誰が議会の構成員を選出する者となるべきか。どのような手段で外界は政府の統治過程に決定的な影響を与えるべきか(67頁)。19C英国も、今も事情は変わらない。民主主義の二つの権利:第一は、シティズンシップという受動的権利(言論の自由、結社の自由、法の下の平等、法の支配)。第二は、統治過程に参加する能動的権利(69頁)。2025/07/04
日の光と暁の藍
10
とても重厚な一冊だった。第一部で現在の危機の原因を過去に求め、第二部で未来への展望を構想する。時代の制約がありつつも、第一部は非常に読み応えがあり、現代にも通じる分析だと感じた。民主主義の危機、それは権利だけではなく、義務の感覚を国民に持たせることを失敗していること。また、自由放任の経済学は個人の利益を中心に理論を組み立てるが、実際の経済は企業が主体で行われている事。自己利益の追求は調和を生み出さない。自己利益の追求に代わる道徳的目的を今でも世界は見出せずにいる。これが危機の原因だ、と。2025/06/08