出版社内容情報
19世紀フランスの政治思想家トクヴィル(1805―59)が,アメリカ社会全般の透徹した分析を通して広い視野で近代デモクラシーを論じた,現代の民主主義を考えるにあたって読み直すべき古典的名著.1835年に刊行された第1巻(第2巻は1840年刊)では,アメリカ社会の具体的な分析を行なう.(全4冊)
「すべてが新しい世界には新しい政治学が必要である」という意気込みをもってトクヴィルは本書を著した.その政治学は新しい世界を理解するための単なる客観的知識だけを意味しない.明らかに古い世界の中に生まれたトクヴィルにとって,新たな世界に自らの場所を見出し,その中で生きるために不可欠な認識をも意味した.その認識を彼は『アメリカのデモクラシー』を書くことによって獲得した.トクヴィルは本書を書いてトクヴィルになったのである.フローベールが「ボヴァリー夫人は私だ」と言ったのと同じ意味で,「『アメリカのデモクラシー』はトクヴィル自身の肖像である」と最新のフランスの研究は言う.
……トクヴィルはフランス人に向けてこの本を書き,「アメリカを描きながら,フランスを考えている」にもかかわらず,アメリカ人自身がこれをアメリカについての本として読み続けてきた長い歴史は無視できない.アメリカ人の自意識の中に本書は深く入り込んでいるのである.「アメリカについてこれまで書かれた最良の本」というアメリカの評者さえいる.
(「解説」より)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
124
4分冊の日本語版を読み始めました。英語版でも時たま読んでいるのですが、分厚い本で遅々として進まないのでこちらを読むことにしました。大昔政治学の岩永先生の訳での抄訳版を読んだりしたのですが、一部であったせいか少し不満がありましたが、やはりこの本はわかりやすい訳です。アメリカの地政学的なところから入り、社会の状態などを詳しく説明しています。また第一分冊の後半では司法権や政治、憲法などについて自分の国のフランスなどとの比較をしています。2015/12/01
ころこ
45
アメリカ思想に宗教色が強いのは、米大統領選を通じて日本人の知ることとなった。以前は理性的で熟議が行われ民主主義のお手本とされてきたが、最近は首を傾げることが多い。トランプ現象がその元凶だというのが日本での見方だが、果たしてそれだけなのか。古典に立ち戻ることで、アメリカで何が行われているか理解するのに役立つかも知れない。本巻では、まず著者がピルグリム・ファーザーズと同じ目線で自然をみて、思索を巡らす。後年に展開されるアメリカ思想が自然と宗教から生まれてきたことに対する直観はさすがという他ない。第2章からは、2024/05/08
高橋 橘苑
22
アメリカを語る上で欠かせない名著という事で、とにかく読み始める。タイトルが“アメリカ見聞録”や“アメリカ社会の考察”でなく、「アメリカのデモクラシー」である事に注意したい。序文に「合衆国に滞在中、注意を惹かれた新奇な事物の中でも、境遇の平等ほど私の目を驚かせたものはなかった」と基本構想を示している。デモクラシー自体が何の抵抗も無く、その本能に流されている国という表現、又、デモクラシーというこの抗いがたい革命を見て著者の心に生じた一種の宗教的畏怖。これらは現代の我々がアメリカに持つ危惧に繋がっているだろう。2017/03/26
ロビン
19
1805年生まれのフランスの政治思想家トクヴィルが、アメリカ合衆国の民主主義体制を見聞し分析した古典的名著。はじめは北アメリカの地理から始まるが、後はほぼ法律の勉強をしているような感じだ。アメリカの行政、立法、司法、上院・下院の仕組みとその性質、大統領と君主の比較や、州と連邦政府という二重の権力の長所・短所など。アメリカの地理的条件が、大陸国のように陸続きの他国がひしめいている場合と異なること、植民という歴史のために国民に文化や知的な水準にばらつきがなくまとまりやすいことが、連邦国家形成に有利に働いた。2025/04/21
ヒロキです
18
アメリカの政治体制が如何に良いかを基本的に述べた本。アメリカの建国の過程からの政治体制について述べているので非常に何故その政治体制が出来たのか納得がいきすい。またアメリカの政治体制は地方分権型であるので地方創生を考える日本にとって非常に参考になると思った。個人的には地方分権は市民一人一人に政治を考えさせるので地方分権型の方が良いなとこの本を読んで思った。しかし、戦争をする際には即断力の方が重要であるので集権型がいいと思った。またアメリカの司法制度について国の法律が州を従えていないことが凄いなと思った。 2019/06/24