出版社内容情報
イギリスが近代市民社会へと変革を遂げつつあった17世紀後半の指導的思想家ロック(1632‐1704)の哲学上の主著である.彼の政治,経済,宗教,教育など多岐にわたる著作の根底にある近代合理主義は本書において哲学的に深められた経験論的認識論として実った.18世紀ヨーロッパ思想の主流イギリス古典経験論の基礎的著作.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆうきなかもと
12
この本は、たぶん読み始めて5年ぐらい経つ。このたび一念発起して、年越しまでに最初から読んでやろうと思いました。そこで岩波文庫全四巻の解説をあらかじめ全て読み、1巻目から読み直すことにしました。 《心は、思考する素材を多くもてばもつほど、多く思考する。》 ちなみに、この本を読む意義は、人間の知性の限界をに対する理解を深めることと、近代以降の政治経済に多大なる影響を与えたジョン・ロックの根本的な人間観や知性観を知ることにあります。2015/12/15
Kei
11
読了したとは言えないほど、理解が出来ていない。とても難しかった。また読む。2016/06/29
みみみんみみすてぃ
10
ライプニッツの著作に「人間新悟性論」というのがあって、なぜかその本を持っていた僕は、読み始めたのですが、ライプニッツは「かの偉大な哲学者の議論」というような形で明示こそしないものの、ジョン・ロックの「人間知性論」を下敷きにして批判しているのだと気付かされました。ジョン・ロックは「市民政府論」の方が有名だと思いますが、イギリス経験論の主著となるような大作を残していたのですね。ジョン・ロック、ライプニッツとくると、次にドイツ観念論のカントなんかが思い出されて、このへんは西洋哲学の醍醐味といった気がします。2016/10/05
しんすけ
5
「百見は一考にに如かず」と、脳髄に刻まれるようになったのは、社会人になって暫く経ったころだはずだ。そのころから世に、考えることを捨てた「経験派」や「体験派」という連中を貴重な存在とする風潮が蔓延りだしていたからだろう。ロックは経験論の創始者とも云われる人物であるが、考えることを尊重した人でもあった。俗に云う経験主義者ではない。本書においても知性の端緒が経験であることを強調し、人間は性善でも性悪でもなく経験がそれらを決定づけるとしている。2017/01/18
ppp
2
改めて読むと、言葉の多義性が、解釈の一様性を阻むと同時に、ロック哲学の深みを作り出しているなと思う。悪名高い(?)「観念」は言うに及ばず、「知覚」や「感覚」、そして一番ひっかかった「意識」と「判断」は、非常に分かりにくい。あと、渋々生理学的説明に入り込むとき、ロックの認識論のステータスはがらっと変わる。Book3の言語論、Book4の認識論が愉しみになる。2013/04/09