出版社内容情報
下巻では市民社会、労働、教養、人間性、そしてキリスト教の問題が論じられる。ヘーゲル哲学とそれ以後の哲学の革命的な断絶とは?
内容説明
下巻ではルソーおよびヘーゲルとともに登場した市民社会、労働、教養、人間性、キリスト教のあり方をめぐる問題が論じられる。ヘーゲル哲学における世界史的な対立項の宥和という楽観的な議論が、そこに潜んでいた両義性によって革命的な断絶を引き起こし、マルクスとキルケゴールの徹底的批判をよび、ニーチェの永遠性の哲学に至る。
目次
第2部 市民的=キリスト教的世界の歴史(市民社会の問題;労働の問題;教養の問題;人間性の問題;キリスト教の問題)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ラウリスタ~
13
上は途中で投げ出したが、下は頑張って読んだ。おそらくドイツの19世紀思想史の教科書的理解を決定付けたような本なんだろうなと思う。キルケゴールとか、ヘーゲルとか、何に対して戦っているのか分からないような、哲学者たちを歴史的に、そしてテーマ別に整理し、因果関係を明快に説明している。マルクスとか、ニーチェとか、その批判や通俗的理解が幅を利かせる思想家たちをコンテクストにはめ込んで説明してくれる。なるほどな、哲学部の学生はこうやって勉強するのかと想像する。2016/04/08
さえきかずひこ
10
下巻に入り、この本の主役が時代の進み行きとともに崩壊してゆくヘーゲル思想であることに気づいた。ニーチェは重要な役回りではあるが前著『ニーチェの哲学』で論じたからか、わずかに登場するのみである。とくに"キリスト教の問題"と題された第5章が読みごたえがあって楽しかったがラガルドやオーファーベックといった神学者たちの言っていることはよく理解できなかった。ひとえに自分のキリスト教神学と信仰についての知見が不足しているからだろう。同章8節のキルケゴール批判も冷静さが際立ち、彼の矛盾を鋭く突いていてまた読み返したい。2018/08/24
roughfractus02
8
ヘーゲル『法哲学』の「理性的なものは現実である」という宣言は、真理の探求と世界の宥和という哲学の営みを精神の発展する歴史過程として捉えるという革新的な態度表明だという。が、彼の死後科学と産業が理性を水平化し、現実を量的面に制限する傾向が強化されると、歴史過程が精神の発展という彼自身の哲学体系を解体する契機であることが露わになる。著者は、この精神システムを均一化する市民社会を支える歴史、労働、教養等諸概念に理性/現実等のキリスト教的対立構図と終末論的歴史観を見出し、西洋文化がニヒリズムに至る必然を見据える。2021/10/09
Happy Like a Honeybee
7
ニーチェの永劫回帰など知識があれば、ある程度は読み解ける。 キリスト教の根本的な精神やギリシャ正教などマイナーな哲学者の話になると、東洋人には敷居が高い記述。 来日時におけるすき焼きパーティーに、プラトンの饗宴を見い出す人ゆえに根っからの哲学者。 蓼科山や軽井沢における日本人蔑視など、西洋人における偏見は時代が経ようが不変であろう。2018/11/16
なっぢ@断捨離実行中
6
ヘーゲルが近代的自我の円環を完成させ(閉じ込め)てからキルケゴール、マルクス、そしてニーチェへと至る19世紀ドイツ哲学史。抽象的で難解な記述に出くわすわけではないがとにかく量が多い。著者のレーヴィットは本書を亡命先の仙台で仕上げたそうな。20世紀とは前世紀の哲学が世界を変えた世紀だったが、反面技術の驚異的な発展や大衆社会がそれを押し流してしまった世紀でもあったように思う。この本にはどこか哀しさが漂っている。二度と戻らない歴史の不可逆性に対する哀しさが。2017/11/21