岩波文庫
共同存在の現象学

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  • サイズ 文庫判/ページ数 508,/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003369319
  • NDC分類 134.9
  • Cコード C0110

内容説明

“互いに共に在ること”は、人間の基礎的な構造である。“私”はつねに“きみ”に対して存在し、“私”を根底から規定するのは“きみ”である。師ハイデガーの問題圏を引き継いで、“共同相互存在”のあり方と日常の生のかたちを濃やかに分析する、日本でも教鞭を執ったユダヤ系哲学者(1897‐1973)の独創的な思考。

目次

1 フォイエルバッハの将来の哲学の根本命題
2 共同相互存在の構造分析(共同世界と「世界」ならびに「周囲世界」との関係;共同世界の内在的諸構造)
3 相互に自立的なありかたをしている一者と他者(現代の問題設定の批判的な叙述;人間の「自律」のカントによる基礎づけ)
4 私の「唯一性」における“私自身”(責任ある関係は或る者をただ「関係にそくして」顕わにする一方、或る者が「自体的に」どのように在るかを覆ってしまう;じぶん自身への独特な関係の可能性が「個性」を構成する ほか)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

roughfractus02

11
師ハイデガー『存在と時間』と同じ1927年に上梓された本書は、自己と他者からなる共同存在を存在論から接近する師に対し、存在の唯一性が提起されても共同存在を成す人間生活は捨象されている、と批判する。著者は、生きた歴史という観点から共同存在の捉え直す。日常では自己と他者を対立ではなくひと組のユニットであり、他者との誤解があるからこそ自己の唯一性も生じる。自己中心や他者中心はこのような構造内の変動が作り出す傾向なのだ。変動をもたらす歴史とは、そのつどの出来事の歴史である。物語のような時間直線を進む歴史ではない。2021/10/21

Ex libris 毒餃子

8
『存在と時間』くらい難しかった。2022/12/16

Ecriture

3
今年のベスト読書(1月15日現在[笑])。ハイデガーの現存在分析で不十分だった、根源的に共同相互存在であるような(「きみ」にとっての「わたし」であるような)現存在を考え、非明示的な関係性によって規定され、演じることになるペルソナ的自己について分析し、「共同世界の現象学的な構造分析」へと進んでいく。今となっては共同世界のあり方が大きく異なるため、対面の他者のみの共同世界論では満足できないところもあり、レヴィナスの多元的実存論と比べながら読んだ。ピランデッロ作品の例がおもしろい。これはオススメの一冊。2012/01/15

Bevel

3
「人は関係することによってのみ客観性が手に入れることができる」というフォイエルバッハのテーゼの射程を明らかにしていく本。道具的なものを巻き込みながら、「私ときみ」の応答関係としていくつかの議論が先鋭化される。より分かりあえる対話の理論を構築するのではなくて、沈黙することも演じることも理解し合えないことも肯定的にとらえるところが面白かった。あと「性的」という言葉の使い方が、独特だと感じた。2010/01/18

evifrei

2
ハイデガーの哲学を理解してから読むのが理想なのだろうが、そう迄いかないにしても現代哲学の基本的な素養を身につけている事は本書を読むに当たっては必須であると思う。(辞書を引きながら読む事も可能ではあろうが、現代哲学の最初の一冊に本書を選ぶと難易度は極端に上がると考えられる。) 内容の理解とは別次元の話として、本書を読むと人間とは何か更に解らなくなる(Ⅱ部23節)。結局自分とは誰なのか。日常生活でそこまで矛盾抵触関係にある自己が立ち上がることはまずないだろうが、概念上は起こり得る。それが哲学の面白さだろう。2019/08/13

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