出版社内容情報
ソクラテスという天才がいかなる背景から真に新しく普遍的な思想の地平を開いたのか,そしてその精神はいかに継承されたのか――イギリスの代表的な古典学者F.M.コーンフォード(一八七四―一九四三)が,明快で面白く,見事な統一性をそなえた思想史の物語を語って聞かせる.西洋古典学,ギリシア思想史の格好の入門書.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シッダ@涅槃
28
時間をおいて読んだら、なにが「ソクラテス以前以後」なのか、ソクラテスのもたらしたインパクトはなんだったのか、わからなくなってしまった!ただペルシア戦争からソフィストの興隆(ソクラテスの時代)、ペロポネソス戦争と民主主義、モラルの荒廃(プラトンの時代)、この2つの戦争と偉大な二つの知性の誕生が密接に関係している事実は銘記しておいて良いと思う。2018/09/09
fishdeleuze
15
本書はケンブリッジで一般向けに行われた講義を纏めたもの。「ソクラテス以前のイオニア自然学」「ソクラテス」「プラトン」「アリストテレス」の四講を収録。ソクラテスがイオニア自然学に背を向け人間の生の研究へ向かった大きな転回点。プラトンのイデア論とピュタゴラス派との関係、アリストテレス、プラトンの離反後の業績、とりわけ自然学の先見性についてなどが芝居のように語られる。ソクラテスの転回はもとより、プラトンとアリストテレスの資質が正反対だった故にギリシア哲学はこうも深い広がりを見せたのかもしれない。良い入門書。2013/05/10
ヒダン
14
ソクラテス以前は超自然的神話から離れ宇宙全体が自然的であるとするイオニア自然学があった。しかしソクラテスの目指す魂の完成のためにはイオニア自然学の説く世界の起源や唯物論は役に立たなかった。ソクラテスは魂(=善を悪から知り分けて、過たず善を選ぶことのできる内観能力の座)を発見した。これは社会的強制ではなく希求切望の道徳であるという点で画期的であり、プラトンはこれをイデア論として結実させた。アリストテレスはプラトン主義ではないように見えるが、目的因、理論的神観念あたりにプラトン主義の影響が強く残っている。2016/01/11
Ex libris 毒餃子
11
魂の概念が我々の想定するものと違っていることがわかった。2022/03/27
Gokkey
11
講義録のようで大変よみやすい。タイトルは以前についての話もありそうだが、ほとんど以後について。プラトン、アリストテレスについての基礎知識は得られるが、この本でしか得られない何かが有るかと聞かれると? 古代ギリシア史の文脈の中での知識の整理に役立つかと。2020/07/28