出版社内容情報
ラスキンの豊富で円熟した思想内容の一端を示す名篇であり,3つの講演からなっている.第1講「胡麻」では読書の道を論じ,第2講「百合」で夫人教育論を講じ,第3講においては「人生と芸術の神秘」を説く.なお本版には特に1871年版と1882年版の長文の2序文を付している.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
59
この世には読まれるべき書物がある、それは書く人が岩に彫りつけても伝えたいと願う書物である…こういったラスキンの書物や芸術に向ける激しい熱情には圧倒される。だがミルトンを読んでどう思うかは問題でなく、ミルトンがこう思ったと確信を持てる事だけが重要…というのは(判る気もするけど)権威主義ではないか。一方でラスキンは、人々が金儲けではなく《チヤンと仕事して居れば、實を結ぶべき花に綺麗な花が生ずるやうに娯樂が生れる》と言っている。仕事の中から美と宗教の一つになった娯楽、即ち芸術が生まれるという考えはいいなと思う。2016/03/17
無能なガラス屋
7
本書の第一講(胡麻)で「王者の書庫」という概念が出てくるが、これはヴァレリー・ラルボーが『罰せられざる悪徳・読書』で述べた「万人に開かれた貴族階級」とほぼ同じと見て間違いないだろう。先にラルボーを読んでいた方が分かりやすいかもしれない。この二つの概念に気付いている人はどれくらいいるのだろうか。「胡麻」を読んだ人には是非ラルボーの方も読んでもらいたい。2020/07/13