出版社内容情報
教育とは直接的な経験から出発し,これを絶え間なく再構成・拡大深化してゆく過程である.従って,それは子供や学校の問題にとどまらない.とすれば民主主義社会における教育とは何か.教育に関する在来の学説をこの観点から根本的に洗い直し,デューイ自身の考え方を全面的に展開し世界の教育界の流れを変えた二十世紀の古典.
内容説明
教育の本質、目的と方法について論じて来た著者は、やがて現代社会の分析と批判に向かう。そして、デモクラシーの理想の実現をはばむ数多くの制約をのりこえてゆくためには、教育を通して諸個人のさまざまな資質や興味の自由な発展を促し、開かれた心、主体的に行為し享受する人間を確立しなければならない、と力説する。
目次
教育課程における遊びと仕事
地理および歴史の意義
教育課程における科学
教育的価値
労働と閑暇
知的学科と実際的学科
自然科と社会科:自然主義と人文主義
個人と世界
教育の職業的側面
教育の哲学
認識の理論
道徳の理論
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
114
下巻はデューイの主張する”プラグマティズム的な実践教育”の理論を補完する形式で話が進む。教育分野において知識の取得重視に偏重してしまった理由にプラトン(ソクラテス)哲学において知恵の取得と技術の取得を分けてしまい、知恵の取得を上位にしてしまったことにあると主張する。ただプラトンは知恵の取得を奨励したが、後の人が”知恵の取得”と”知識の取得”(私見だが、この辺りの混同はアリストテレスが怪しい)を混同させてしまったと嘆いている。知恵の取得とは、単純に言ってしまえば”考えることである”(吾思う。故に吾有り)。2016/08/18
りょうみや
20
なぜこの本からこんなにも感銘を受けたのか、それは巻末の訳者解説にもあるが、デューイが見詰めていたものは「最も進化した生命の本来の姿」「最も充実した人間の生活」であって、その充実した生活こそ、結果的に見て最も良い教育だということをきわめて深い考察をもって示したからだと思える。2020/05/10
CCC
11
やや読みにくかったけれど、著者が示した開かれた学のあり方には好感が持てた。ざっくり言って、教育から奴隷的要素を排除しようとしている感じがする。2018/02/15
isao_key
10
解説で訳者も述べているが「本書はたしかに教育論ではあるけれど、そこで一貫して問い続けられている主題は、いかに生きるか、充実して生きるとはどういうことか、ということであった」という通りに論じられている。20章に「経験だけに頼る者はいかさま師に堕落しやすい。彼は自分の知識がどこで始まるか、またどこで終わるかを知らない。だからいつもの決まりきった情況を超えるとはったりをきかせはじめる」と経験だけに頼ることを批判する。ではどうするか。「生徒自身が観察し、熟考し、いろいろな考えを構想しそれらを試す」ことだと言う。2016/12/26
うえ
3
「経験からは、信念の基準は出てこない。なぜなら、多種多様なローカルな慣習からもわかるように、あらゆる相容れない信念を誘発するのが、まさに経験の本性だからである」「哲学者が王たるべきである、というプラトンの説は、理性的叡知が人事を律すべきであって、習慣や欲望や衝動や情緒がそれを律してはならない、という意味に理解するのがもっとも適切であろう」2015/01/12