出版社内容情報
デューイが人間精神の発達を研究しようとして,シカゴ実験室小学校で試みた教育のリポートである.彼は学校を小社会と考え,学校外の社会生活との関連に留意し,子どもの自発的な活動を評価して,権威主義に安住していた伝統的な学校教育を排撃した.本書が戦後わが国の教育改革に与えた影響は大きい.
内容説明
学校とは暗記と試験にあけくれる受動的な学習の場ではなく、子供たちが自発的な社会生活を営む「小社会」でなければならない。このような観点からデューイ(1859‐1952)は、伝統的な学校教育に大胆な批判を加えた。自ら創始したシカゴ大学付属小学校での体験から生まれた本書が、戦後わが国の教育改革に及ぼした影響ははかり知れない。
目次
第1章 学校と、社会の進歩
第2章 学校と、子どもの生活
第3章 教育における浪費
第4章 初等教育の心理学
第5章 フレーベルの教育原理
第6章 仕事の心理
第7章 注意の発達
第8章 初等教育における歴史科の目的
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てち
102
学校は暗記と試験による受動的な学習の場ではない。今後の社会生活のために学校はあるのだ。願望や探究心を満たすためには、忍耐や苦悩が伴う。それは必然的に訓練や知識を獲得する機会となる。子供の探究心に火をつけ、能動的にさせることが重要である。 2020/05/25
こきよ
71
能動的なインプットに導くことこそが教育の理想であろうが、過多な情報が氾濫する現代社会においては、手放しに推奨することが躊躇われるのも事実。教育論は答えが無い。教育とは強制性が伴うものだと言う論もあれば、放任主義的な論もある。が、まず何よりも指導監督すべき立場の我々(大人)が襟を正す必要があるのを大いに感じた。大事なのは知識よりも思考、いかに考える力を身につけることができるか。私見だがそこに導くことこそが教育であろう。2015/05/10
川越読書旅団
26
学校生活と家庭生活とが一体となり、子供が自身の使命と責任を意識・成長する環境作りを提唱する。現行の偏差値偏重主義で、社会に出ても頭でっかちで腑抜けな学生を生産する教育体制を見直す上で非常に参考になる一冊では。2021/12/05
マグカップ
24
著者デューイは、プラグマティズム(「行為こそ、あらゆる観念の源泉である」という考え)の大成者であり、教育学者としても著名です。本書では、デューイによる教育の実験結果や、目指すべき学校のあり方についてまとめられています。①学校は子どもたちによる自発的活動により実現される小社会でなければならない、②学校と社会の間に相互作用が行われなければならない、という学校に関する2つの基本的な軸が示されていました。理想的だとは思います。しかし、今の社会で実現しようとすれば、立ちはだかる問題は山積みだなぁと思います(._.)2021/01/10
Nobu A
21
ジョン・デューイ(翻訳版)著書初読。57年初版、07年第64刷。図書館の処分本を拾ってきたのは僥倖。そうでなければ一生未読だったかも。翻訳者も馬場是一郎、田制佐重、宮原誠一と三代に亘る。巻末の解説が秀逸。恐らく翻訳者が執筆したものだと思うが明記なし。学校と社会の繋がりを重要視した教育理論。自らシカゴ大学附属小学校を実験室として設立したのには恐れ入る。今なら倫理的に不可能。デューイが生きていたら現状をどう思うだろうか。特に日本の教育を。先人の思想に触れてこそ現代社会の諸問題がより鮮明に見えるような気がする。2025/01/31