出版社内容情報
ジンメルの死の前年(一九一七)に刊行された,彼の社会学上の最後の著作.内容という根から一切解放された,いわば形式そのもののための活動である「社交」がここに取りあげられ,文学的とも評されるジンメルの社会学が見事に展開される.ここに彼の社会学の美しく完成した姿を見ることができる.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
cockroach's garten
28
黎明期の4大社会学者に名を連ねるジンメルの晩年の著作。黎明期に共通しているが、社会学は当時新しい学問であったので(正式に学問とは認められていなかったが)社会学とはなんであるかということを説いた著作が他の社会学者からも出ている。本書も社会学の扱う問題に対して論じている。ほんの100数ページと少しほどではあったが、読み進めるのに時間を要した。社会学とは他の学問とは違い、社会や人々の関連性や相互作用を俯瞰的に見ていく学問であることがわかった。他の著作とも比較してみたい。2020/12/11
lily
20
ニーチェ、カント、ゲーテに影響を受けたジンメルが、個人主義の発展の先の多様性の重要性と幸福論を100年前に言及していたことは感慨深い。個人主義者にとって、これほど爽快な気持ちにさせる本はとても貴重だ。2019/06/17
古川
5
一度投げ出した本だが、カントを読んでからもう一度挑戦したらわりとすんなり理解できた。形式社会学というのは、従来の社会学が法律や言語、経済といった実質的な内容を扱い、社会を帰納するものとすれば、逆に人間の心的作用や相互の関係性といった内面から社会を演繹しようとする。実証主義や統計的事実に基づかないのでそれはさながら文学のようだが、観察者に新たな視点を提供することによって、まさしく優れた文学がひとに感銘を与えるように、新たな社会学もまた新たな社会をつくりだす、と言ったら大げさだが、影響は与えうるかもしれない。2014/08/11
ルジャンパール究一
3
なぜ清水幾太郎が書いた文章はあんなに読みやすいのに清水幾太郎が訳した文章はこんなに読みにくいのかヽ(`Д´)ノ (カーの『歴史とは何か』にしても)2016/11/13
りっけんばうあー
3
本当に面白かった。方法論的集合主義と方法論的個人主義との対立。そこに「社会とは諸個人間の相互作用である」という視点を投げかけることからスタートして、一般社会学・形式社会学・哲学的社会学へと話題を移していく。訳文のおかげか、難解ではあるのだろうけど、すっと文章が入ってきて読みやすかった。第四章で社会主義の矛盾を指摘している所は、本当に1918年に書かれた書物なのかと疑いたくなるくらい鮮やか。カントの認識論についても言及されていて、ためになった。ヴェーバーとかデュルケームよりもこの立場で社会学を学びたいな。2016/01/14