出版社内容情報
晩年のニーチェ(一八四四―一九〇〇)がその根本思想を体系的に展開した第一歩というべき著作.有名な「神は死んだ」という言葉で表わされたニヒリズムの確認からはじめて,さらにニーチェは,神による価値づけ・目的づけを剥ぎとられた在るがままの人間存在はその意味を何によって見出すべきかと問い,それに答えようとする.
内容説明
ニーチェ思想の核心をなす「永遠回帰」がついにツァラトゥストラの口を通して語られる。やがては神の国に救われることを夢みて安逸をむさぼる卑小な人間たち。嘔き気をもよおしながらも、そういう人間たちに生の真の意味をつきつけずにはいられぬニーチェの使命感が、芸術的感動をともなってわれわれの魂をゆさぶるのである。
目次
第3部(旅びと;幻影と謎;来ては困る幸福;日の出前;小さくする美徳 ほか)
第4部(最終部)(蜜の供え物;悲鳴;王たちとの対話;蛭;魔術師 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zirou1984
50
再読。ニーチェの思想は暗い様に見えて、実に明るい。永遠回帰とは「これが人生か。よし、ならばもう一度!」と死後の世界にも唯物論にも頼ることなく生を肯定する思想であり、何巡でも同じ人生を繰り返すのだという覚悟が求められる。そしてニーチェは己の意思を疾走させる。それは常識より速く、道徳より高く。そこに倫理は生まれ。しかし彼の言葉を真に受け、模倣している限り彼の忌み嫌う価値観の奴隷にしかなれないのだろう。そう、ニーチェの思想とは、彼以上に疾走する意思を求められる思想なのだ。誰よりも疾く在れ、高くあれ、もう一度!2014/06/28
さきん
48
下巻は、上巻と変わって自己と認識の捉え方が中心となり、主人公も洞穴に長く住まうことになっている。永遠回帰や生きることの苦痛は、仏陀の思想を連想した。4部は、「ましな人々」に懸かる様々な試練を描いている。近代社会から存在意義を失っている王の苦悩からは、現代の天皇を連想した。ほぼ終盤に至ってましな人々が偶像崇拝している様からは、ハイデガーの思想や神道のアニミズムを連想した。2016/11/21
Gotoran
44
上巻で繰り広げられた「超人」思想に続き、本書(下巻)では「永遠回帰」が説かれる。ツァラトゥストラは山の洞窟に籠り、汝自身の価値で生き、たった一度の喜びがあれば人生は何度も繰り返すことができるという在り方(「永遠回帰」)に辿り着く。 神話や童話よのうな文体(短文と格言のような散文と詩)で一見非常に読み易い、が内容は奥深い。本書解説書の『善悪の彼岸』、『道徳の系譜』で前提知識を得た上での対峙であったが、深い理解には至らず。巻末の訳者解説に救われた。非常に秀逸。ニーチェ思想が旨く纏まっている。聖書からの再読を。2013/08/05
姉勤
41
多少の毒は薬にもなる。薬も大量に服めば毒になる。ガキは読んじゃダメだ(当時、読んだが頭に入らず忘れた)永遠回帰。強くてニューゲームではなく弱くてニューゲームをひたすら繰り返す。凡夫の輪廻転生に似たものがあるが、怠けたり悪事を働くとカーストが下がるのとは違う。字面が似ている回向とも違う。あくまでも孤高、独尊という袋小路。頭を撫でてくれる愛すべき人がいれば、彼の神は蘇っただろう。2024/02/11
ももたろう
40
後半部では永劫回帰の思想がついに開示された。その核心にあたるであろう詩。この難解な詩を生涯かけて考え続けたい。「おお、人間よ、心して聞け。深い真夜中はなにをかたる?『わたしは眠った、わたしは眠ったー、深い夢からわたしは目覚めた。ー世界は深い、昼が考えたより深いー、悦びーそれは心の悩みよりいっそう深い。痛みは言う、去れ、と。しかし、すべての悦びは永遠を欲するー深い、深い永遠を欲する!』」この本を、人生のバイブルの一つにしたいと強く思った。2016/01/30