出版社内容情報
「理性が世界を支配し,したがって世界の歴史も理性的に進行する」との確信にもとづき,世界精神の理性的かつ必然的なあゆみとしての世界史をヘーゲルは構想する.一八二二―三一年に五回にわたって行われた講義を彼の死後に編集・整理したのが本書である.「語られたことば」であることを配慮した明快な訳文でおくる.
目次
第2部 ギリシャ世界(ギリシャ精神の諸要素;美しき個人の形成;外交の時代;ギリシャ精神の没落)
第3部 ローマ世界(第二回ポエニ戦争以前のローマ;第二回ポエニ戦争から帝制成立までのローマ;帝制の時代)
第4部 ゲルマン世界(キリスト教=ゲルマン世界の諸要素;中世;近代)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
109
ヘーゲルの歴史観は、西洋中心史観と、共に全体主義的な匂いのする『個人の自由』を提唱している。その後の歴史を観れば、一目瞭然の如く、世界はファシズムへ走り、ヒットラーやムソリーニという怪物を生み出した。一方、ヘーゲルの歴史観の反論として登場したのが、エンゲルス、マルクス(共産党宣言・資本論等)、そしてレーニンである。資本主義(自由主義と同義語)と共産主義という相容れぬ2つの思想は、全体主義という一点で共通し、20世紀を『戦争の世紀』と呼ぶまでになってしまった。果たして人間は、どこで間違ってしまったのだろう?2015/11/28
加納恭史
21
上巻から下巻へ。下巻では歴史哲学がより鮮明に。題材もギリシャ精神からローマ精神へ、更にゲルマン精神へ。マルクスでは歴史哲学の考察がない。ヘーゲル史観から唯物史観へと展開するが、歴史哲学の考察がないので、ゆっくりとこの本を読みながら、どうも歴史哲学としての共産党支配はまだ実験段階かな。歴史哲学とは世界史で理性の歩み、または世界史を自由の発展の過程とする。カントは主に理性による倫理を説くが、ヘーゲルは世界史の中で各時代の精神そのものを哲学している。また結論として、宗教改革と啓蒙思想とフランス革命を取り上げる。2023/06/29
ヒロキです
20
下巻では、ギリシャ世界、アテネスパルタ、ローマ、ゲルマン、そして中世近代について解説がされている。ある種歴史ヒストリー(ドキュメンタリー)を見ているような感覚で読めた。ヘーゲル自身の見解では、抽象的で理性的なギリシャ世界は肯定気味で、具体的実用的なローマ世界は否定気味であった。これも、彼が理性に重きを置く人物である故なのかなと感じた。ゲルマン世界については、国家の地盤が固まって侵略拡大を行うのがローマギリシャなどに見られた傾向に対して、侵略してから国家地盤を構築した点で稀有と述べていたのが印象的だった。2022/01/19
chanvesa
13
ヨーロッパ(しかも近代)中心主義と講義の熱血ぶりが、現代においては評価がいろいろあると思う。「近代にとっては政治こそが悲劇をもたらす運命であり、個人が膝を屈するほかない不可抗の状況の力だ(96頁、古代において運命が政治に代わる)」は鋭い。ヴェーバーがイメージしていた政治の「魔力」(とわたしが勝手に思ってる)の面をこの言葉は示しているように思う。348頁の「思考をしていないときの人間は、他なるものと関係してきることになって、自由ではない」という言葉はその後に続く神との和解は?だが、この部分は面白い。2014/06/22
Z
10
普通に世界(西洋)史の勉強になった。高校の世界史を少し詳しく解説した程度のため難易度も丁度いい。哲学としては世界史は自由の発展の歴史とする。古代ギリシャの奴隷を除いた形での自由の形態、キリスト教により普遍的な自由というのが啓示されるも具体的な形を帯びなかった状態、そして宗教改革以後、フランス革命もあり普遍的な自由というのが具体的に整備されつつある現代(当時)と、まだ現在進行形の歴史の過程にいたり、講義が終わる。『現象学』や『論理学』の難解さはなんなのかと、目を疑うリーダビリティーで驚き。2018/10/05
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