出版社内容情報
この作品は「哲学者としてではなく,一観察者の眼で見た所を叙述するのである」と作者自ら,その初めに当って言っているように,これは美や崇高の理論ないし概念規定は顧みず,むしろそれらの感情性を経験的に,心理的に分類し特質づけると共に,人類一般,その性格気質により,男女の性別,諸民族の分布の如何を記述したもの.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
U
35
カントの作品のなかでは、とっつきやすいという噂を聞いていたが、よみ易そうでいて、一度ではなかなか入りづらい内容だった。以下、印象にのこった部分:永い連続は崇高である/「私はあの人を助けに行かなければならない。それはあの人が悩んでゐるからである。彼が私の友人なり仲間なりであるからではなく、又は一度善行をして置けば、感謝の念を以て答へることのできる男だと思ふのでもない。今は理屈をいうてゐるときではなく、また彼は人間である、而して人間に起ることは、又私にも起るといふ問題に停滞してゐる時でもない」と。(つづく)2015/12/29
しゅん
11
カント40歳の観察書。崇高は大きいもの、山や谷底であり、美は小さいもの、細かい芸術に宿るという二元論からはじめて、さらに細かく腑分けしている。四気質の分け方が信じられていた時代の書物であり、カントもそこに乗って議論していたことがわかる。性別や国民性に対する論は差別とも言われるが、「若干の相のみを概説する」「ほんの一通りの正しさしかえられない」ものであるとカントは注釈を加えており、差別性への配慮も感じさせる。それも今の時代には適さないのは間違いないし、黒人の言説はさすがにどうかと思うが。2024/10/19
ヒダン
11
感想のため再読。崇高には、怖ろしさを伴う恐怖入りの崇高、憂鬱や落ち着いた嘆賞を伴う高貴、崇高の土壌の上に美の広がる立派の三種類がある。崇高は大、単純、美は小さく飾られてよいなど崇高や美の性質を挙げ、女性は美、男性は崇高の徳を持つとか○○人はこうで××人はどうとか、美と崇高の観点からいろんな属性を分類している。崇高は尊敬を美は愛を起こさせる。崇高の感動は美の感動より強力だが美を伴わないと長く味わえない。優れた洞察の割りに話題がすごい身近なので何を言っているか分かる。日本人についても二行ほど記述あり。2015/09/11
T. Tokunaga
4
カントの書いたトンデモ本の一種である。18世紀科学の真髄ともいえるであろう偏頗な分類癖が楽しめる。2023/12/06
午後
4
短くて読みやすいが、後半は単なる偏見の羅列なので読まなくてもいい。『判断力批判』への助走。2021/11/03