文学の冒険<br> 酔どれ列車、モスクワ発ペトゥシキ行

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文学の冒険
酔どれ列車、モスクワ発ペトゥシキ行

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  • サイズ A6判/ページ数 250p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784336038906
  • NDC分類 983
  • Cコード C0397

内容説明

「クレムリン、クレムリン、と誰もが言う。クレムリンのことはあらゆる人から話には聞くが、自分で実際に見たためしは一度もない。もう何度となく、一千回も酔払って、それとも二日酔いで、モスクワを北から南へ、西から東へ、端から端まで突っ切ってみたり、ただ無茶苦茶に歩き回ったりしたのに、クレムリンはただの一度も見たことがない。…」旧ソ連の暗闇を酔どれヴェーニャがさまよい歩く。モスクワ駅から列車に乗り込む彼が目指すは、麗しき女とかわいい幼な児が待つ光あふれるペトゥシキ終着駅。奇妙きてれつな乗客たちと、妙ちきりんな酒を酌み交わし、文学、哲学、恋愛談義に花咲かせつつ、ペトゥシキの光を待ち望む。果たして彼がたどり着くのは…。旧ソ連の地下出版で大ベストセラーとなり、世界十数カ国で翻訳されている現代ロシア文学を代表する傑作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

マリリン

51
ヴェーニャの彷徨いつつの戯言が面白すぎる。酒好きにはたまらないだろうな。たまにしか飲まなくても、あの感覚にエクスタシーを感じたことがあるなら支離滅裂で意識も感性も飛びまくり理性を放棄したりしなかったりのあの世界に誘ってくれる名作。戯言は意外に奥深く当時の歴史的背景を感じ芸術・哲学・恋愛や政治等にも及び、名作や名著が羅列する。ロシア文学の意外性を見たが、当時地下出版だったとは。酔いどれてみたくなる危険性も孕んだ作品。最後はこう来たかという感。...人生はつかの間の酩酊、魂の混濁。ペンと紙の傍にはウォトカ。2022/08/15

syaori

51
眠気覚ましにズブロフカを一杯ひっかけて、モスクワからぺトゥシキ行きの汽車に乗るヴァーニャの旅を、彼の周りの素面の乗客のように「ほほう!」と見ていました。ほほう! 飲む、ひたすら飲む酔いどれヴァーニャが語るのは、愛、文学、政治について。その酔いどれぶりにあきれた笑いを禁じえないのですが、しかし本当に世界にあきれ、絶望しているのはこの酔っ払いなのにちがいないのです。気付くと世界は見えない(恐らく粛清の)恐怖に満ちていて、おかしいのにうそ寒い、これが旧ソ連のベストセラーだったのかと思うと何か薄ら寒い気持ちです。2017/07/03

たまご

23
陽キャ教養豊かな酒好きインテリが,これでもかこれでもかと酒を飲み天使とも語らいながら,ペトゥシキを目指す列車に乗って乗客と語らいながら…と,ロシア人みんな酒好きだなー酔っぱらいだなーほがらかほがらかと思っていたら,だんだんと雲行きが怪しくなり,どんどん聖書の影がちらつき,そして…. 単なる酔っ払いの話だけでは,ソ連時代地下出版でベストセラーになりませんよね.これがベストセラーになるロシア,シニカルで懐が深い.でも最後は酒があればOKな雰囲気も感じてしまう.2023/02/01

taku

19
語り口は酔どれのくだ巻きと饒舌。ユーモラスに著していても哀しみの陰がゆらめくのは、世の中や国へ疑義を呈しているからか。この本は、ヴェーニャが自らの人生をベースに様々な感情や寓意を混ぜ合わせたオリジナルカクテルだ。確かに知識と教養が豊かなら、より深く堪能できるけど、足りなくても味わい十分、酔える。神の御名に恥じない一杯に「酒溺聖者の嘆き」と名付けたい。列車は魂を乗せて向かう。悲劇のままか救いがあったのか、行き着いたその場所に酒があるかないか、だろ?2022/09/17

長谷川透

17
酔いどれのモスクワからペトゥシキへ冒険。たかが百kmの列車旅で冒険と呼ぶのは仰々しいと思うかもしれないが、冒頭から既に酔い、二日酔いを迎え酒で応え、千鳥足のまま駅に辿り着くも、到着した記念に一杯ひっかけ、列車の中でも居合わせた酔払い達と語り酒。酩酊した頭の中では天使が彼に語りかけ、一人の時さえぶつぶつと酔払いの戯言を呟く。何とも酷い小説だ。しかしこの小説がソビエト時代を舞台にしたものと知るや否や、アル中糞野郎の珍道中は切実な逃避旅行として映るようになる。そして辿りついた先での顛末を思えば……。あぁ恐ろし。2013/12/11

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