出版社内容情報
『純粋理性批判』『実践理性批判』につづく第三批判として知られるカントの主著.カントは理性と悟性の中間能力たる判断力の分析を通じて自然の合目的性の概念と普遍的な快の感情の発見に到達し,自然界と自由界の橋渡しを可能にするこの原理を確認して壮大な批判哲学の体系を完成した.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
16
日本人には批判というのはアレルギーをもつ人もいるだろう。 判断力第一格律は正命題で、『物質的な物とその形式との産出は、すべて単なる 機械的法則に従ってのみ可能であると判断されねばならない』。 第二格律は反対命題で、『物質的自然における所産のなかには、単なる機械的 法則に従ってのみ可能であると判定され得ないものがある』(58頁)。 理性にとって最も大切なことは、自然の産出における機械的組織を放下しない こと、およびこの産出を説明するに当って自然の機械的組織を看過しないこと(99頁)。 2014/03/26
Bartleby
14
自然は精妙な秩序をわれわれに見せてくれる。そうした自然に対して時に人は、機械的な因果的連鎖以上のもの、何か統制的な目的があるかのような感じを抱く。カントは、自然そのものが目的を持っているかどうかは人間には分からないとしつつも、人間が「まるで目的があるかのように」自然を見てしまう事実は認め、そうした認識の意味について考察を行う。あくまで「まるで~かのように」の次元に踏みとどまることに後代の哲学者が不満を感じた気持ちもわかるが、人間の認識の限界を理解し、それを超えでまいとするカントの態度には潔さを感じる2016/01/25
しんすけ
8
一週間前に『判断力批判』の本文を読み終えたが岩波文庫に限ってこれで終わらない。それは一般に普及しているドイツ語PDFにも付属していない旧序文が岩波文庫には付属しているからである。この旧序文は普及版の2倍もの長さで文庫の頁数にして100頁近くある。普及版も50頁だから決して短くはない。旧序文を読むにあたって普及版を冗長にしたくらいだと思っていたのだが、読み進めると、読者はその考え方を捨て去ることを強要される。回りくどくはあるが、省略不可能な文章が連なり、哲学と何かを問わねばならない義務を背負わされてしまう。2018/11/12
しんすけ
7
第二部第二篇に空間に関する叙述がある。/空間は自然における産出の実在的根拠ではなくて、その形式的条件にすぎない。...空間においては、いかなる部分も全体と関係するのでなければ規定され得ない.../ p97 空間を空間単独で観るのではなく、空間を形成する部分の集合に注目している。省みるとカントが一つの定義を行う場合に対象を単独で観ることは、まったく無いと云える。また部分を解釈する際にも似たようなものを集めて分析するのではなく、必ず対立要素を定置して叙述を論理展開する。2018/10/28
しんすけ
6
『判断力批判』の最後は証明に関する記述になっている。主題は「神の存在」であるが、それについての結論ではなく、らしきものが以下のように書かれているだけである。/神の概念はすでにその起原において、かかる存在者に対する我々の責務から引き離され得ないものなのである。/ p225 これだけでは証明としては不完全である。続いて背景が論述されると期待するが、カントはそうしない。この逆の事象を12行に渡って書き記した後に以下を記す。/もし道徳的法則に対する尊敬の念がまったく自由に、...2018/11/05