出版社内容情報
認識に関して経験的なるものと先験的(ア・プリオリ)なるものを区別し,先験的認識の妥当する範囲と限界を明らかにした本書こそ,哲学史上いわゆるコペルニクス的転回をなしとげたとされる世紀の古典である.『実践理性批判』『判断力批判』とその後に展開してゆくカントの壮大な哲学体系の基礎であり,また総論でもある.
内容説明
イギリスの哲学者ヒュームの示唆をうけて、先験的観念論をうちたてた『純粋理性批判』は、『実践理性批判』『判断力批判』とならぶ、カント(一七二四‐一八〇四)三大批判書の一つで、これら「批判哲学」の基礎に相当する、著者の理論の代表的労作である。
目次
1 先験的原理論(先験的感性論(空間について;時間について)
先験的論理学(先験的論理学の構想;先験的分析論))
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Francis
20
9年間も積読していたが、デカルトが面白かったので近代哲学の巨匠のこの積読していた本を読んでみることにした。難しいが面白い。人間がどのように考えているのかを哲学者が考えた本、と言えばいいのだろうか。この本を読んでいると脳細胞が刺激される感じがした。果たして中・下は読めるかな?他の本を読んで時間をおいて中を読むつもり。2018/03/01
wadaya
17
恐らくデカルト以降、こんなにわかりやすく経験論を否定した哲学もないだろう。カントは形而上学がアプリオリにしか感じ得ないものだと承知した上で、人が理性で認識できるものの限界に挑戦している。理性は初め原則を必要とする。原則は条件をくぐり抜け普遍に近づこうとするが、条件は無限であり、常に不完全でしかない。そして理性は再び原則に逃避する。その時、理性はもはや経験を必要としない。カントはその経験から切り離されたステージを形而上学と位置付ける。アプリオリは形而上学に根ざしている。経験を一切必要としない。理性はアプリ→2020/10/03
Gotoran
17
カントの主著『純粋理性批判』(上・中・下)の本書(上)をやっと読み終えた。難解覚悟で読み始めたが、やっぱり難しかった。ただ、全体(上・中・下)の思惟(思索)の概要が、本書(上)に緒言として言及されていることから、大まかな内容については把握できたように思う(思っているだけかも)。本書では、現象を手掛かりにして思索していく際のメカニズムを感性、悟性の順に論考。キーワード;アポステリオリ(経験的)な知識としての理性=経験的認識、自然科学・数学におけるようなアプリオリ(先験的)な理性=純粋認識 次は中を。2013/01/03
春ドーナツ
15
読み比べをついに始める。訳文の差異が新たな視点を提供してくれたり、両者を合成することによって、言わんとしていることが見えてくる効能があるように思う。今回、カントとフッサールの思索の方法、進め方とその目的は重なる部分が多いのではないかと感じた。例えば、カントの「感性と悟性と時間によって経験を主観的に認識する」という命題に至る過程は、フッサールの「判断停止(エポケー)を前提として、内的時間における意識の流れがアプリオリとされるものの中でどのような作業をしているのかを研究する」という風にパラフレーズできまいか。2024/02/15
泉のエクセリオン
13
ドイツの哲学者カントが既存の形而上学を批判し、新たな形而上学を打ち立てんとした大著。要するに、ものの認識に関する内容であると思う。何か或る物が我々の感覚を刺激して、我々の心には「表象」が生じる。その「表象」を検討するのであるが、これには純粋直観の形式である時間と空間の中で、感性だけでなく、ここに認識能力の源泉の一つである「悟性」を用いる。「悟性」を適用した場合の「表象」を「現象」というようで、「悟性のカテゴリー」を用いて検討するが、その「もの」が何かということは、我々には知ることは出来ないという。2025/05/16