岩波文庫
孤独な散歩者の夢想

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 201p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003362310
  • NDC分類 135.3
  • Cコード C0198

出版社内容情報

『告白』につづいて書かれた本書は,その自己探求の道をさらに進めたものである.晩年全くの孤独に閉されたルソーは,日々の散歩の途上に浮び上る想念を,つれづれの印象を,事件を,あるいは生涯のさまざまの思い出を記し,人間と自己を見つめ続けた.偉大な思索家ルソーの諸著の中でも,特に深い感銘を与えるものであろう.

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

116
随筆であり、哲学書でもあり、分類が難しい作品。その点が本書の一番の魅力だ。訳者によるとルソーの晩年に書かれたもので、厭世観が強い。当時ルソーは多方面から攻撃されており、そのような苦しい状態がこの作品には反映されているのだ。苦境の中にあっても、自分の生涯を振り返りながら、嘘について真摯に考察する「第四の散歩」のような文を書き記す誠実な姿勢に心を打たれた。一番気に入ったのは「第五の散歩」で、詩と哲学が一つに溶け合って、非常に美しい散文になっている。自然が慰めになると言うのは、日本人も親しめる思想だと思う。2017/01/06

やいっち

79
高校時代に愛惜した書。ルソーは幼い頃からの複雑な家庭環境、後年の酷薄とも思える彼自身の仕儀もあってか、始原への探求が彼の性分となっている。『人間不平等起源論』や『言語起源論』に限らず著作の題名を見るだけでもその傾向が歴然としている。  また、始原へ根源へと迫るのは哲学者の宿命だし、またそうした性向がないと哲学に関心を持つはずもないのだが。

masabi

17
ルソーはその卓越した洞察力と思索から時代の寵児となるも晩年は人々から迫害を受けていると感じ世俗を離れ慎ましく暮らし始める。自己省察に思いを馳せ孤独のなかでも満足に生きる。市民の一員であることを誇りに感じていたルソーが散歩のなかで自分が市民社会に馴染めなかったことを顧みる場面では迫害の熾烈さの一端を読み取れる。道徳的義務、嘘に対する考察。第一から第七の散歩はデカルトの省察を意識したのか。2014/10/14

misui

13
迫害に遭って病的な被害妄想に陥ったルソー最後の作品。一部を除けばほぼ釈明や恨み言で占められていて憐れを誘うが、よくよく読んでいくとかなりのところ本人が招いた事態なのではとも思う。完全に人嫌いをこじらせたルソーが世間と縁を切って自然に慰めを求める様は悲痛で、しかもそれが類を見ない美しい記述なので本当につらい(5章、7章)。この自然への逃避がロマン主義へと繋がるというのは色々と考えさせられるものである。2017/08/15

giant_nobita

11
具体的にどういう仕打ちを受けたのか、それがなぜ理不尽なのかといった説明を抜きにして、ただただ他者への憎悪と自己憐憫を繰り広げたところで共感はできないが、むしろ晩年のルソーの人間としての未熟な姿がありのままに描かれているところに興味を惹かれる。ナルシスティックな記述も鼻につくが、ところどころ反省が顔を覗かせている箇所もあり、特に第六の散歩の、善行が習慣になることで忌避感が生まれるという話はたしかにそうだと思った。第五の散歩は世評通りの美しい文章であり、情景が目に浮かぶようだった。2019/03/29

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/501349
  • ご注意事項

最近チェックした商品