出版社内容情報
貴族令嬢ジュリと家庭教師サン・プルーの間の,愛と貞節のこの書簡体小説は,「告白」「エミール」と並ぶルソーの三大長篇のひとつである.過去の恋の思い出と,妻および母としての義務との板挟みになってついに力つきて倒れるジュリの運命は,ルソーのロマンティシズムと革命的社会観とを,その優麗な描写の中にあますところなく語る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
136
この観念小説は死の床で元恋人への遺書での告白の為にあった。今の若者の恋人の多くが新海誠監督の映画を共有し、涙するように、当時1800年までの40年間で70版を重ねた本書を話題に手紙を書きながら想いを馳せ、涙しあった時代が確かにあったのだろうなぁ。2019/09/07
ケイ
136
3巻の途中で思ったのだが、やはりもう一度読み返したい。最後を踏まえたうえで、彼らの手紙を読み返したい。その境遇に同情してきたジュリのことを、後半に入ってからは敬うような気持ちで読めた。彼女の夫についても。恋の苦しさを描くための恋愛小説ではなく、人としてのあり方、強い感情との向かい方なのではないかと思えてきたからだ。書簡からのみ成り立ってはいるが、周りの人物たちの手紙も挟むことで、二人をときにすぐ隣に、ときに少し離れて眺めていられたようだ。感想が、しかし、上手く出てこない。消化しきれない感じが残る。2017/08/25
NAO
46
『新エロイーズ』は、リチャードソンの『クラリッサ』の影響を受けて書かれ、「フランス版『クラリッサ』だが『クラリッサ』よりはるかに劣る」と酷評されたそうだ。私としては、淑徳を盾に取ったような高慢なクラリッサより、恋と家名の存続の間で悩むジュリははるかに人間的情愛にあふれて好感が持てた。サン=プルーは、自分の思いを一方的に投げつける激情家の面とあまりにも高邁な思想を披露する哲学的な面のギャップが大きすぎるが、それも、恋ゆえか。ガーディアン必読書。2017/04/29
しんすけ
4
解説の最後の言葉が、この作品の特徴を明確にしているのでないか。「確にこの小説はもう古くなった。しかしながら、このことはこの小説がルソーの思想史において、著作史において依然として重要な地位を占めることを妨げるものではない。」小説としてみれば陳腐な部類に属するもので、物語としてハッピーエンドがあり得ないことも第2巻で読者の大半が気づく。人妻になった元彼女の亭主の了解で交際を続ける設定も不自然すぎた。その終わり方は宝塚歌劇のように漫画チックでもある。確かベルバラではオスカルが『新エロイーズ』を読んでいたはずだ。2016/07/14
とまと
3
愛する妻がかつて愛し今も愛しているだろう元彼の存在を知り、愛する妻とその愛すべき元彼に対し、許しと癒しを与える。優しさ、賢さ、度量の深さ、精神の安定、これら全てを含んで余りあるものをヴォルマール氏は持っている。言うなればこれが“徳”とやらなのだろうか。これが理想の物語に過ぎないとしても、これを理想とし得る作者の精神がすごい。2012/09/14
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