出版社内容情報
神の存在や本性について、異なる立場の三人が議論をくり広げる。ヒュームの思想理解に欠かせない重要著作。
内容説明
宗教に合理的な基礎はあるのか。知性と善性をそなえた神の存在を論証できるのか。この問いをめぐって、正統派のデメア、懐疑主義のフィロ、自然宗教のクレアンテスの三人が丁々発止の議論をくり広げる対話篇。デイヴィッド・ヒューム(1711‐1776)の多岐にわたる思想的営為のエッセンスが集約された重要著作。1779年刊行。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
24
クレアンテス曰く、世界は一つの大きな機械にほかならない。無数の小さな機械に分かれていること。小さな機械も、人間の感覚や能力では捉えて説明することができないほど細かく分かれていることが分かる(44頁)。人間社会は、無知と知識のあいだ、自由と隷属のあいだ、富と貧困のあいだを、絶え間なく変転する状態にある(103頁)。デメア曰く、生のそれぞれの段階には弱さ、無力、困窮がつきまといます。生は、最後は、苦しみと怖れのなかで終わります(145頁)。2021/01/30
ミスター
9
傑作。三人の架空の哲学者による自然宗教に関する対話編が本書の内容である。わりと三人の言っていることと対話編の中での立ち振る舞いにズレが生じている点こそ見るべきところだと思う。戯曲風の哲学書として有名なのはプラトンだが、あれはソクラテスという最強キャラクターのノーサイドゲームであって、ほぼプラトンの自説を吐露しているだけだろう。しかし本書がいいのは三者の力関係がわりと均一でどのキャラクターも論破されてキレたりする人間臭さを持っているところだ。プラトンにはない文学的な感性こそ本書の魅力だと思う。2020/04/13
Ex libris 毒餃子
4
ヒュームの考え方が分かったような気がします。他の著作にも挑戦しなければ。2020/03/20
世人
1
この議論の前提となっている「自然宗教」という概念への理解が足りなかったので必然的にこの本の議論も消化不十分な所があった。自然科学によって見出だされた自然の規則性を根拠に自然の創造者たる神の存在を主張する自然宗教の主張とそれへの懐疑論の立場からの反論の中に、因果性の分野におけるヒュームのギロチン、反実仮想依存などヒュームの重要な思考が見出だされる構成となっている。2023/12/04
なすびぼし
0
はじめ私は、哲学の対話篇というものはすべて、著者の代弁者である教師役と、一般人に近い生徒役の対話であると思い込んでいたため、いかにも教育者らしき立場にあるクレアンテスが、ときおり短く抽象的なコメントを挟むばかりである事に戸惑い、ヒュームの意図はどこにあるのかと困惑しました。しかし解説を見ながら読み進めるうちに、経験によるアポステリオリな議論の問題点を批判するフィロとデメアも決してただの生徒役ではなく、この議論の中でむしろ積極的な役割を担っていたことに気づき、その複眼的な議論のあり方に驚かされました。2021/08/25