出版社内容情報
プラトン,モアの流れを汲むユートピア物語.孤島「ベンサレムの国」の歴史や風習,学問の府「サロモンの家」の実験・応用施設の記述は現代への警世の書としても読み得る.忠実なる助手ローリーの「ベーコン伝」を付す.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ベイス
55
えぐいディストピアのあとの毒消しにとユートピア小説。F・ベーコンが描く孤島「ベンサレムの国」。鎖国体制をとりながらも定期的に外界へと使節団を派遣し、学問や技術、書物を収集する。島内には「サロモンの家」なる施設があり、あらゆる分野の研究が行われている。中にはエコサイクル的概念も登場、時代を何百年も先取りしていることに驚かされる。キリスト教的倫理観が規範だがその支配は緩やかで、ユダヤ人らの特質も認められている。小説家ではないからか、実践の人・ベーコンが書いたユートピアは夢物語な感じが全くしない。未完なのが残念2020/07/11
閑居
10
シェイクスピアと並び評されるルネサンス期の英国碩学の名士、フランシス・ベーコンの未完の短編。訳者解説によれば、本書はベーコンの理想とした法的秩序と研究環境を小説風にまとめたものだとか。確かに北欧的な福祉国家像の中に、EU的な「開かれた学術機関」を思わせる学問の府「サロモンの家」が登場する。そういえば、ベーコンが存命であったらいまのBrexitをどう見るのだろうか、などと思わなくもない。2019/03/19
ヘラジカ
9
知の巨匠として有名なフランシス・ベーコン。格言はよく聞くが実際に著作を読んだのは初めて。シェイクスピアと同一人物説があることには驚いた。未完であるためユートピア文学としては、モアやカンパネッラと比べると重要性に乏しいかもしれない。しかし、科学を探求するための理想的な環境を提示している点ではこの上なく先鋭且つ建設的だと言える。他の著作も是非々々読んでみたい。2013/02/18
ラウリスタ~
9
ガリバー旅行記をキリスト教的に、道徳的に書いたらこうなりました、、、みたいな本です。ベーコンの著作を一つでも読んだといえるのでまずは満足。大学の図書館で7年間置いてあったのに一人目でした・・・。2010/07/11
misui
8
フランシス・ベーコンによる未完のユートピア物語「ニュー・アトランティス」とベーコン小伝を収める。舞台のユートピアがある種の研究施設を中心に成り立っており、その施設・制度がどのようなものであるかを述べるくだりは、現実の研究機関の設立に大きく影響したという。軽く読めて経験論者ベーコンを知る最初の一冊によい。2018/04/10