出版社内容情報
合理主義哲学者スピノザが,その友人知己との間に取交わした往復書簡のうち,今日判明しているものすべてを収めた.スピノザの人柄とその思想を理解するためにぜひ必要な資料である.またこれらの書簡の往復に,慎重に人目を避けねばならなかったそのころの時代的背景も十分にうかがい知ることができる.
内容説明
スピノザが、友人知己19人と交わした全書簡を収録。ゲーテが人間愛と誠実について読みうる最も興味ある書である、と絶讃した。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
lily
18
書簡集、日記はこれだから面白い。内面も17世紀のブームも周囲からの評価も代表作の概要も苦悩もフルコースで味わえるから。という事でスピノザが知りたかったらエチカより書簡集でしょう。エチカは未読だが今のところ満腹だ。辛辣、皮肉、卑下、罵倒した文面のオンパレードに、小学から高校レベルまでの自然科学の傾倒、幽霊を信じるかなど言語知性だけは飛び抜けてる子供が子作りについて真剣に語るような精神性が気に入った。2019/06/08
またの名
13
祈る人を見て不謹慎にも笑ったと伝えられるスピノザの宗教論や幽霊否定に「あなたの誤りと罪を悔い改めなさい。新しく生まれ変わりなさい!」と怒る手紙が殺到。親友から顔も知らない読者までを相手に交わした書簡で、自説を公表して世間から非難される恐れに躊躇していた哲学者も、善悪などない、聖書の通りに奇跡が起きたはずはないと独自の存在論を構築しつつ主張し始める。スピノザにとって欠如は比較する思考の産物に過ぎず、盲目の人に視力が欠如しているとは物同士の比較の上でしか言えないように、悪や悪魔という欠如した事物は存在しない。2018/09/17
karatte
12
再読。広く一般の読者に読まれる前提で改稿・自らラテン語に訳したりなど、単なる手紙のやり取りとは一線を画す、スピノザ哲学のこの上ない注釈書である。今回特に考えさせられたのは書簡67と67の2。いずれもカトリックに改宗した元門弟らによるものだが、これがもう本当に凄まじい。宗教勧誘の域を大きく逸脱した、狂信的【折伏】の書となっている。ユダヤ教コミュニティから破門され、キリスト教徒にも口汚く罵られ、当時最も自由思想的性格を帯びていたデカルト主義者からも疎まれし【無神論者の王】と同時代人らの、生々しい対話の証。2019/12/27
兎乃
11
毎年 夏に数冊スピノザを再読する事を課しています。今年は書簡集と神学・政治論、そして、やはり「エチカ」を。『すべての人は、自由を持つことを誇りますけれども、この自由は単に、人が自分の欲求は意識しているが自分をそれへ決定する諸原因は知らない、という点にのみあるのです。-58』 ..."Cotus"を考える夏です。2012/08/21
amanon
6
昔から読まねば…と思いながらも、なかなか読めなかった一冊。一応読了したものの、理解の程はあやふや。殆ど字面を追っていたという感じ。ただ、この当時にあって、相当に危険な思想をスピノザが説いていたこと、その危険性が故に、体制側から目をつけられていたのにも拘らず…というか、むしろしれ故に多くの支援者や理解者を得ていたという事実に、心温まるものを覚える。また、この当時における書簡が持つ意味の重たさを再認識。交通網が発達していない時代に交わした異国間の書簡が時代を超えて読み継がれているという事実に改めて驚愕。2023/04/27