出版社内容情報
スピノザは『エチカ』の中に自己の哲学思想のすべてを結集させた.典型的な汎神論と決定論のうえに立って万象を永遠の相のもとに眺め,人間の行動と感情を嘆かず笑わず嘲らず,ただひたすら理解しようと努めた.ドイツ観念論体系成立のうえに大きな役割を演じ,また唯物論的世界観のすぐれた先駆的思想でもある.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
田氏
31
哲学者の國分功一郎先生いわく「OSが違う」というスピノザ。なら哲学のOSが特に構築されていない段階で読めばクリーンインストールできるかも?と目論んで読み始めてどうなったか。なんのことはない。処理能力をオーバーしてシャットダウンするだけのことであった。我々の精神や感情を、大元の公理から展開して証明する試み。概略をこの255文字にて私が述べることは不可能である。なぜなら、もしそんな芸当ができるのであれば、私はとうにその方面で飯を食っているはずである。現実はそうなっていないゆえ、これは不条理である。Q.E.D.2020/04/24
兎乃
27
再読 / 恒例夏のラヂオ体操がわりに 朝の10分のスピノザ読み 今年はエチカ。八月最後の日曜日、スタンプ満杯。やがて 血となる肉となる。2015/08/30
Gotoran
27
スピノザ思想を知るために、本書にトライ。幾何学的論述形式(定義、公理、定理に構成され、定義・公理から演繹された論理的帰結が体系的に展開される)に不慣れさと戸惑いを覚え難解さも感じつつ、概要把握のための粗読の域に留まった。上巻では、自己原因の定義、神即自然(人格神ではない汎神論)、決定論/人間の身体(延長の属性)と精神(思惟の属性)、感情・欲望は観念の一種、表層知、理性知、直観知という3つの認識論/人間の根本的感情は欲望、喜び、悲しみの3通り。まずは下巻を粗読。他類書(入門書)に当たり、本書を要再読。2013/06/10
内島菫
25
上巻は神について、人間の精神や感情についての定義、定理とその証明及び備考が延々と続く。神についていえることを人間についても演繹しようとする方向性ではあるが、各々の定義・定理・証明の三者が同じところをぐるぐる回っている印象を拭いきれない。「同語反復(タウトロギア)」という言葉が一度出てきてそれを犯すまいとスピノザはしていたが、私にはむしろ(デカルトにも感じたことだが)タウトロギアの中に深く潜り込んでそれから見えてくるものを読み取るべく促されているように思われた。しかしスピノザはデカルトに沿いつつも反論する。2020/12/23
壱萬参仟縁
25
1677年初出。神の本性や各種定理が説明されている。わたしは神をこのように説明されている本を読んだことがなかった。神は唯一。神の絶対的本性あるいは神の無限の能力(82頁~)。唯一なのに他の宗教でもいろいろな神が存在しているのは矛盾している。宗教戦争にまで発展してしまっては、平和は確保されない。自然は何の目的も立てずまたすべての目的下人は人間の想像物以外の何ものでもない(86頁)。ある人に善く見えるものが他の人には悪しく見える。 2014/08/03