出版社内容情報
生は浪費すれば短いが、活用すれば十分に長いと説く表題作。他に、『心の平静について』『幸福な生について』を収録。古代ローマの哲学者セネカ(前4頃ー後65)の実践的倫理学の特徴がうかがわれる代表作3篇。
内容説明
生は浪費すれば短いが、活用すれば十分に長いと説く『生の短さについて』。心の平静を得るためにはどうすればよいかを説く『心の平静について』。快楽ではなく、徳こそが善であり、幸福のための最も重要な条件だと説く『幸福な生について』。実践を重んじるセネカ(前4頃‐後65)の倫理学の特徴がよく出ている代表作3篇を収録。新訳。
目次
生の短さについて
心の平静について
幸福な生について
1 ~ 1件/全1件
- 評価
孤独な建築家の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
89
自分の在り方。時の過ごし方。改めて考えさせられる。深淵なる言葉。夕べ観た、ズームバック×オチアイに響く。視点・視座の置き方で変わる。利他。2021/05/22
cockroach's garten
69
ストイックの語源となったストア派。創設者のセネカは禁欲、克己、徳を教義とし、欲に塗れた都市から抜け出し静謐の保てる場所へ移動することを唱えた。都市では己が仕事や時間に束縛され、支配される。やがては老い、余暇が出来たらもっと長く生きたかったと悔やむ。そうならないための金言がこの中にはある。とっつきにくい印象とは違って非常に分かりやすく書いてあった。後半はエピクロス派やアリストテレスを信奉する者に対する反論が中心となってくるので、エピクロスの著書も読んで参照するとより面白くなるだろう。2016/10/06
イプシロン
66
哲学書を読むたびに感動するのは、本文はもちろんのこと、解説に見える訳者の慧眼であったりする。本作もそのような名解説のある一冊といっていいだろう。キリスト教がローマに根付くための論理立てとして、ギリシャ哲学がどのようにローマ化されてストア思想が成熟していったか、かつまたそのストア思想が『論語(儒教)』や「道(TAO)」と相似することを示してゆく解説――表現様式は異なっても、あらゆる宗教・哲学が目指す真理はたった一つの同じものであることを示唆している――に思わず唸ってしまった。2019/08/02
コウメ
62
我々は短い人生をうけているのではなく、我々がそれをみじかくしているのである。我々は人生に不足しているのではなく浪費癖しているのである。時間も財産と同じように、使う人によっては増大するし、消えていく。/財産を守ることはケチであっても、時間を投げ捨てると貪欲であるのが唯一の美徳である場合なのに、たちまち最大の浪費家になる。2019/09/17
康功
62
2000年の時を越えて、ローマの哲学者が説いた分かり易い普遍的真理。現代を生きる日本に住む私の心に何故これほど突き刺さるのか、、生は浪費すれば短いが、活用すれば十分に長い。心の平静については、徳を身につける努力を怠らない事が大切と説いている。富、名誉は、望まずとも徳の副産物として後に手に入る。私自身も他人の言葉に左右されず、世の中に役立つ品性である徳を身につける努力をして行きたいと感じた。セネカは、暴君ネロの家庭教師であったが、そのネロによって死に陥し入れられた悲劇の哲学者だった。2017/11/15