出版社内容情報
クリムトやマーラーなど,世紀末ウィーン文化を多方面にわたって批評したバール.本邦初の評論集.
内容説明
「彼は実は絵を描いたのではなかった。見ることそのものを描いたのだ」。批判の渦中にあった画家クリムトを擁護し続けた評論家ヘルマン・バール(一八六三‐一九三四)。世紀末ウィーンの文化・芸術の優れた案内人となった彼の代表的な文章を精選する。
目次
1 「若きウィーン派」へ―一八八〇年代末~一八九〇年代(批評を批評して;現代性(モデルネ) ほか)
2 「分離派」―一九〇〇年前後(名匠オルブリヒ;ヴェル・サクルム(聖なる春) ほか)
3 音楽と建築―一九一〇年前後(オットー・ヴァーグナー;フーゴー・ヴォルフの思い出 ほか)
4 総点検―一九一〇年代前半(救いようのない自我;宗教 ほか)
5 ウィーンを離れて―一九一〇年代後半~一九二〇年代(クリムト;フリッツ・マウトナーの新刊書刊行を機に ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
76
クリムトが作品並びのその生活すらも叩かれていた頃、彼が表現した美と芸術性を見抜き、説いた批評家がいた。それがヘルマン・パールマンである。堅苦しく、権威主義に成り下がった批評界を批判しつつも、流行りに乗っては上部の美しか取ろうとせずに筋が無茶苦茶な新鋭の批評には釘を刺す批評から、根は情熱で真摯な御仁だったのだと伺わせる。特に詩神から授かった音律を持つ怜悧な批評を書いたロリスこと、ホフマンスタールへの批評では賛美と敬愛の嵐。そして彼を語るパール氏の筆から恋をする少年のような熱量を感じました。2020/02/09
kero385
3
昨年東京都美術館で「エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」が開催された。そのための下準備として、幾つかの美術書を集め読んだが、その中で見つけた一冊。ヘルマン・バールは、名前だけは知っていたが、ほとんど翻訳されていないため纏まった文章を読むのは初めて。一連のクリムト評やウィーン分離派への言及は、今ではもう当たり前の内容となっているけれど、これがほぼ同じ時期に現在に通じる評価をしているところがすごい、と言うか現在が、バールの評価をスタンダードとして受け入れていることかもしれない。2023/02/04
午睡
1
世紀末ウィーンの空気感を内側から見れた。2023/04/03
Lieu
1
評価の定まらないうちからクリムトやホーフマンスタール、マッハを始めとする新しい芸術・思想を擁護した功績は大であり、時代感覚あふれる人物であったとは思うが、そういう人物にありがちなように、この著者固有の変わらない主義やこだわりが見えてこないので、特に心に響くものはなかった。それぞれの分野の現代の専門書を読んだ方が良いと感じた。まあどんな国や時代の評論も百年以上経てば大抵そうなるのだろう。2020/07/04