内容説明
深い精神性そして鋭い写実。ドイツ・ルネサンスの代表者デューラー(1471‐1528)。稀有の画家の遺文集。家譜や覚書などの貴重な自伝的資料、友宛てのヴェネツィア便り、祭壇画の注文主との熾烈な駆け引き、年金獲得交渉書簡などの筆の冴えは500年前に生きた近代人の心性を鮮やかに映し出す。『ネーデルラント旅日記』姉妹編。挿図多数。
目次
自伝(家譜;覚書(断章))
書簡(ヴェネツィア通信;ヤーコプ・ヘラー宛書簡;その他の書簡)
解題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Alm1111
7
まず画家デューラーの自伝…と思って読むとアテが外れる。複製も含め奇跡的に21世紀まで遺った彼の手紙と彼が両親の記録を書き留めたわずかなメモを並べ、それに訳者が注釈をつけたもの。これを読んでもデューラーの人生はわかりにくい。どこかに彼の年表や人生の概略でもまとめてあるといいのに。書簡もいきなり、何とかさんに頼まれた宝石を買ったけどどうしましょ?とか年金滞ってる苦情とか、ごく個人的なやりとりの手紙が並び、この人誰?どういう意味?などデューラー初心者にはハテナが並んだ。デューラーオタク向きだなあ2025/01/09
takakomama
7
自伝でデューラーは18人兄弟! 手紙の書き出し、相手への呼びかけがどれも仰々しいです。謙遜しながらも作品の値段の交渉が強気で、自負が見え隠れしています。衣装道楽だったそうです。大学の社会人講座「ドイツルネサンス」の講座の参考。2024/10/30
壱萬参仟縁
5
あとがきではデューラーは画家であり、貧しい職人の家に生まれ読み書きはままならない感じを受けるが、版画家としては独創的、破天荒(297頁)。しかし、生き様を記した本著は作家に負けない堂々たるもの。木版画の繊細さも凄いものだ(13頁)。評者は文末注より脚注の方が歓迎したい派で本著は後者。88-89頁に紹介される「薔薇冠祝祭祭壇画」は多くの人物が描かれた1506年の油絵。赤ん坊が複数人出ているので、なんとなく平和な像だと思われる。版画は評価されていたが、色使いに問題があったというが、この絵は自慢だったという由。2013/03/01
ラウリスタ~
5
えっ なにこの本?前半はまるで創世記のように、兄弟の生まれを列挙し、後半は金くれ金くれの手紙の嵐。さぁて、デューラーについてまったく知らない僕は何を読めと。それはともかく、画家の金策については良く分かる。手紙の内容がとっても生き生きとしていて、素晴らしいそうだが。ただ、生まれた年を考慮すると若干印象が変わる。なんとラブレー以前。ラブレー以前に小説なんてないも同然だから、そう考えるとデューラーの赤裸々な書き方があまりにも現代的に思え、興味深いのかもしれない。ただ、なんで読んだのだろう。2011/07/22
T. Tokunaga
3
主として、年金、報酬、美術通やイタリアの画家たちからの嫉妬と毀誉褒貶、新興勢力たるルターへの市民としての支持と相半ばする世俗的でカトリック的な思考、俗語での事件の描写(父母の死の覚書)という発想の勃興などが読みどころである。それと同時に、末尾近くには著書の献辞も多々あるが、これは、すでに同時代に印刷された書物が話題性をもち、献辞で弁明を余儀なくされていたという、北方ルネサンスの面白さである。2025/05/07
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