出版社内容情報
ゴッホ(一八五三‐九〇)が一発の銃弾で三十七歳の生涯を閉じたとき世人はその作品をガラクタとしか見ていなかった.この書簡集はこうした世の無理解や悪意と戦って画業に燃焼しつくした天才の類まれな魂の記録である.上巻には親友であった画家ベルナール宛の,中・下巻にはいわば生涯を兄にささげた弟テオドル宛の書簡を収めた.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
aika
47
画家ゴッホがこれほど理知の人だったとは思いもしませんでした。友人ベルナールへの手紙に綴られたミレーとドラクロワへの愛と、緻密な色彩の研究と分析には驚きました。流行文学から聖書、歴史書に至るまで、深い知見でベルナールの絵や詩に忌憚なく意見を言う様子は、ゴッホが芸術の中に真理を見出だそうとした人であったことを物語ります。日本の芸術家たちのように開かれた関係性を理想とするも挫折した寂寥感には心が痛みますが、ベルナールがこの友人を世間に忘れさせないよう、展覧会や書簡の出版に奔走する友情の深さに胸が熱くなりました。2020/03/17
壱萬参仟縁
33
1911年。ヴィンセントは、『日本のような美しい国で、水は景色に豊かな青を添えエメラルド色の斑紋は、まるで日本の版画をみるようだ』と(24頁)。個人主義が団結心を枯渇させれば偉大なものが生れるはずもない(50頁)。美とは個性によって感じた新しい真理のなかに包含された崇高なものを発散させることである(58頁)。クロード・モネでさえ、お金がなく、借りることも出来ずに半年間も絵を描かなかった(68頁)。2021/06/23
ビイーン
31
ゴッホは筆マメで膨大な数の手紙が残っている。経済的に精神的に追い詰められ、それでも絵を描くことしか手段を持てなかった天才ゴッホの人生は哀しみ深い。2024/01/23
多田幾多
27
手紙を読んで思った事は、「自分よりも他人を思っている」。自分の病気より友人の病気や体を思い、友人が送ってくれた絵に対して褒め。そして的確なアドバイスを与え、画家達の共存を望んでいる。ゴッホからの手紙はどれも絵画に対する情熱が、夢と希望に溢れていて、なんだか自分まで情熱が溢れてくる。そういえば……ゴッホが手紙で何度も描いたように、「星の夜空」は描けたのだろうか?2013/11/30
あかくま
26
先日、モネ展を見た際に、一緒に展示されていたゴッホの絵を見て突然気が付いた。私はゴッホの絵が好きなんだ・・。印象派の絵の中にあって、ゴッホの色彩が輝いて見えた。「これらの天才(ミレーやドミエ、ドラクロア)が気狂いじみていたとも考えられないことはない。彼らを手放しで感心して好きになるためには、こちらも少し狂う必要がある。」(p146)ゴッホの手紙は色彩のことでいっぱいだ。彼の目には、高感度に色を感じる特別なセンサーがついていたのかもしれない。彼の手紙には「熱」がある。名付けようのないその熱に、魅かれる。2014/04/30
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- 和書
- アメリカ合衆国ユタ州